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「白の祝宴」

森谷明子「白の祝宴 逸文紫式部日記」東京創元社

紫式部の書いたもう一つの書・紫日記。
その中に名が出てくる女性の子孫が、一生懸命、日記を書き写すところから始まります。

一度出仕した後、すぐに宿下がりしたきり戻らなかった紫式部。
(当時はまだそう呼ばれてはいない)
家に戻って療養しつつ、源氏物語の続きを書いていた紫式部こと香子が、再びの出仕を求められて、ためらいつつも応じることに。

1008年、夏。
折しも中宮・彰子が、天皇の子を産もうとしていました。
十代前半に入内したので、結婚九年でやっと出来た初めての子。
父親の左大臣、藤原道長の張り切り様はこの上もなく、土御門邸でのお産の模様を女房達に書き記すように求めます。
紫式部はそれをまとめることを求められたという設定になっています。

大量の原稿をつぎつぎに渡されて、困惑する式部。
女達の性格や人間関係も把握しかねて、苦慮するのでした。
これは、名もない女達が記録を残すことの出来る珍しい機会だったのですね。
だから、そうした苦手意識や遠慮は気にすることはないのだと、彰子には言われるのですが。
彰子はまだ若く、天皇に熱愛された中宮定子ほどの才気はなさそうですが、おっとりした人柄の大きさが現れていますね。

紫式部日記が独りで書いたにしては冗長で、文体や視点にも矛盾があることから、こうだったのではないかと推測した内容。
さらに、陰で起きていた事件の謎解きというミステリも。

付き従う女官達は、すべて白装束。
お産のときには産婦と介添え役は白衣というのは当時の上流階級のしきたりでした。が、大勢の召使いすべてが、何日も前から白装束、というのはかってないこと。
刺しゅうも白か銀、正装の時だけに着ける唐衣や裳まで白ずくめなのです。

「千年の黙」で登場した小間使いの女の子あてきが大きくなって、りっぱな人妻・阿手木として登場。
といっても、別々に暮らすのが普通の当時の夫婦。
阿手木は京極堤邸で仕える御主(おんあるじ)である紫式部の留守を守り、式部の弟、娘の賢子の面倒を見ています。
夫の義清は、彰子のライバルだった亡き中宮・定子の縁に繋がる立場。
定子の弟の隆家中納言に仕える郎党なのです。

定子は、10歳になる一の皇子・敦康と姫宮の修子を遺しました。
定子亡き後は彰子が母代わりとなっていましたが、出産のため実家に戻ったので、二人は隆家の邸に引き取られて、父である今上帝とも会いにくくなっています。
ここで、彰子に男の子が生まれれば、二人の立場はさらに弱くなってしまう。
この子らの付き添いとして、清少納言もちらっと登場。

中納言邸で狼藉をはたらいた賊の一人が、血を垂らしながら逃げ、彰子のいる邸に駆け込んだ…?
阿手木は義清の頼みで、童の小仲を連れてその跡を探索に行き、賢い御主に事情を相談します。
道長のほうからも、式部は内々に探索を頼まれます。誰かが不逞の輩を手引きしたかも知れないということで。
その後、土御門邸では、呪いに使ったと思われる札が床下から発見される。誰が何のために…?

阿手木は、夫の仕事に関わりのある謎を解くために行き来しつつ、陰に日に式部を支えることに。
大人の女性の色々な悩みは、源氏物語もかくや?
当時の色々な立場の人の思惑が入り乱れ、生き生きしていて、面白かったです。
2011年3月発行。
2003年発行のデビュー作「千年の黙」の続編に当たります。

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