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「風待ちのひと」

伊吹有喜「風待ちのひと」ポプラ文庫

主人公は、中年の男性。
母の死後、体調を崩して二ヶ月。
数週間は休むことにして、母が晩年に暮らした家の整理のために、海辺の町・美鷲に滞在することにします。

女子校の教頭を勤め上げて退任した母が建てた家は和洋折衷で、岬の家と呼ばれていました。
一人息子の須賀哲司は、エリートといってよかったのですが、勤め先が吸収合併され、今は閑職に追いやられた失意の身。
しかも、妻の浮気にも気づいてしまったところ。

哲司が、たまたま車に乗せていく羽目になった中年の女性。
福井喜美は、夏場だけはいつも故郷に戻って、近くのスナックを手伝っているのでした。
丸顔で太めだが、実はペコちゃんという伝説的なあだ名があります。
哲司の様子を見かねて、岬の家の片づけを手伝うことを申し出るのでした。
家の中にずらりとCDが並んでいるクラシック音楽について、教えて貰うのを交換条件として。

故郷ではキンコというあだ名もある喜美。キンコ瓜という薄味だが食べやすい瓜にちなんでのことです。
お節介なほど親切で、いきいきしていて暖かい人柄。
実は、家族を亡くした悲しみを秘めていました。
ピアノの才能を認められていた息子を偲んで、息子が聴いていたクラシック音楽について知りたいと思ったのです。

近くにあるスナックのミワは、喜美の亡くなった夫の叔母がやっています。
マダムは哲司の母とも親しく、哲司をジュニアと呼ぶのでした。
孫の舜がガンプラに夢中になっているので、取り上げて持ってきたと言い、興味を示した哲司にあげると。
若い舜が、実は哲司の母と仲が良く、何かと岬の家の手伝いに出入りしていたこともわかって…

ふとした出会いから、付き合いが次第に深まっていく様子が自然に描かれています。
全く違う育ち方をしていた二人でしたが。
寂しさやみっともなさ、大人だからの諦めやためらい。
一夏を、共に過ごす。
妻子ある哲司は、いずれ家庭に戻る人と思う喜美子ですが。
切れそうになった繋がりは…?
ハートウォーミングな作品です。

「夏じゅう、教えてくれた」「生きる喜びを」

著者は、1969年、三重県生まれ。
2008年、第三回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞。「夏の終わりのトラヴィアータ」改題。

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