フォト

おすすめ本

« 「ホテルジューシー」 | トップページ | ブルー系の単の二人 »

「アネイリンの歌」

ローズマリ・サトクリフ「アネイリンの歌―ケルトの戦の物語」小峰書店

児童文学作家として知られるローズマリ・サトクリフ。
YA(ヤングアダルト向け)歴史作家といった方が良いのかな。
子どもだけに読ませておくのは~もったいない!作品ばかりです。

これも、男の子を主人公にした作品ですが。
ある村で男の子プロスパーが育っていく様子や、付け人として与えられた奴隷の少年コンと、次第に友情をはぐくんでいくのは、他の作品と似ています。
史実に基づいていて、戦いの様子が絶望的なので、万人にはお勧めできません。
本人は生き残るし、戦いは最後の方で、あっという間ですけど。

ゴドディンの国。
少年プロスパーは、三つの郡を治める領主の次男です。
12度目の命名日、付け人として買われた奴隷コンを、父に与えられます。
親戚で幼なじみのリネットと3人で、仲良く暮らすのでした。
あるとき兄の犬が帰ってこないのを心配して3人で探しに行き、森で白い雄ジカを見かけ、神秘的な思いにうたれます。

白い鹿の評判を聞いてウルヴァイ王の王子ゴルシンが狩りに来ますが、目の前に白い鹿を見た王子は、狩りをやめるのです。
鹿が犬たちに狩られるのを止めようとついてきていたプロスパーは、王子の思いを知り、いつか仕えたいと望むのでした。
2年半後に、待望の迎えが来ます。

アネイリンとは、実在の吟唱詩人の名。
ただ歌うのではなく王に仕えて、記録の意味もある歌を作った竪琴弾きの華でした。
「ゴドディン」という~国の戦いを勇壮に歌い上げた歌が残されているんですね。
古ウェールズ語で現存する最古の長編詩だそうです。

紀元600年の頃、ローマ帝国の支配が終わり、今でいうイギリスの地には、大小いくつもの国が割拠していました。
ケルト系のブリテンやピクトの民族が、ゲルマン系のサクソン人やアングロ人の国々の隆盛に押され始めていた時代。
かってケルトの王アーサー・ペンドラゴンがサクソン人を破ったことも、語り伝えられていました。

ハドリアヌスの壁の北には、ゴドディン、ストラクスライド、レゲドの三つの国がありました。
ゴドディンのマナゾグ王の呼び出しに応じて、首都ダン・エイディン(今のエディンバラ)に300人の騎士が集められて同胞隊(カンパニー)を作り、1年間の訓練の後に戦場へ向かったのです。
小さな国の王子の一人ゴルシンも召し出されたので、プロスパーを従者に加えたのでした。
騎士一人に従者が二人ついて主人の背と互いを守り、矢型隊形を作るのが基本になっていたのです。

黄金王と呼ばれるマナゾグ王の豊かな暮らし。
仲間達とは次第に友情が生まれ、まだ戦争は素晴らしい物としか考えていませんでした。
コンが鍛冶に興味を持っていることを知るプロスパーは、弟子入りを勧めます。
奴隷はそういう修行は禁じられているため、コンはためらいますが、ここならコンが奴隷と知る者はいない。今がチャンスだと。
付け人が欲しいと思ったことはなかった、これで友達がいるだけになったと思うプロスパー。

南方のデイラ王国の王が死に、サクソン人が乗っ取りに掛かりました。
同胞隊は、ついに出陣するのですが…
サクソンはあまりに強力で、カトライスに駐屯する同胞隊が待てど暮らせど、援軍を寄越すと約束した国からは、ついに援軍が来ない…
王の庶子である将軍はついに勝利を諦め、サクソン人の兵を少しでも減らし、痛手を与えてすぐには侵攻してこないようにすることを目的に、突入することに。

300人の名前すべてが詩に歌われ、残っているというのは感動的。
300人のうち、ただ一人の生き残りはカナンという騎士。
カナンはもともと王の信頼篤い家臣の息子で、親衛隊の中でも際だった三兄弟の一番美しい長男でした。
アネイリンの詩の中では美しく称えられていますが、ただ一人の生き残りと言われ続けるのは耐え難いと、国を離れることを決意します。
プロスパーは、カナンについてコンスタンチノープルを目指すことに。
300人というのは騎士なので、従者は勘定に入っていないというのが、サトクリフらしい視点。

1990年、発表の作品。
92年に亡くなっているので、晩年の作品になりますね。
死後に発行された作品もあるので、初出あるいは書かれた時期はもっと前なのかも知れませんが。

« 「ホテルジューシー」 | トップページ | ブルー系の単の二人 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「アネイリンの歌」:

« 「ホテルジューシー」 | トップページ | ブルー系の単の二人 »

2019年10月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

カテゴリー

無料ブログはココログ

最近のトラックバック