フォト

おすすめ本

« チュニックと黒チュール | トップページ | 5月の花 »

「東京島」

桐野夏生「東京島」新潮文庫

映画化もされて、有名ですね。意外に薄い文庫でした。

無人島に流れ着いた人々が30数人。
その中に、女性はたった一人だけ…
幸い、タロイモなどの天然の食べ物は、豊富な島でした。
清子はサバイバルに身を投じて変身、若い男達には望まれ争われる対象となります。

まず隆と清子の夫婦が、那覇から出たクルーザーで難破したのです。
三ヶ月後に漂着したのは、バイト先のタコ部屋のような苛酷な生活から逃げてきたという若者達23人でした。
清子は隆の転落死の後に、二度目の結婚をします。
夫が生きているうちから清子を求めた気の荒い若者カスカベが、隆を突き落としたのか、あるいは自殺だったのか…?

それから、中国系の男達11人が漂着。
船の中でもめ事があって降ろされ、捨てられたのでした。
船が来たことに驚喜した日本人は、振り向きもされず、去っていった船に落胆します。
彼らをホンコンと名付け、別々に暮らすのでした。
彼らは日本人よりもずっとたくましく、目つきの悪いリーダーのヤンはいかにも強そう。
木を伐りだして、かなりしっかりした家を建て、船まで作り上げるのです。

日本人達は数人ごとに、ブクロ、ジュク、シブヤなどと名付けた地区に小屋を建てて、住んでいました。
食中毒で死んだ者、いきなり海に入っていった者、森で暮らす者。
廃棄物らしいドラム缶が転がっているためトーカイムラと名付けた浜辺に住んでいるワタナベという男もいました。

救出を待ちわびながらも、人々は退屈しのぎに熱を入れ始めます。
清子夫婦は、ある程度は船から物を持ち出せたのでナイフなども持っており、レンタルしてはお礼に食べ物を受け取ったりしていました。
清子に全く相手にされないワタナベは、屈折した憎しみを募らせていきます。

遭難して5年後、46歳の清子は、くじ引きで決められた4人目の夫ユタカと暮らし始めます。
記憶喪失で27、8歳の夫は優しく、よく見るとハンサムで、意外に幸せな生活に。
しかしホンコン達が作り上げた船で脱出するのに誘われた清子は、とっさに応じます。
だが、しばらく航海した後に船は、一回りして島に戻ってしまう。

拉致されたのだと言いつくろうのですが、夫を捨てて脱出したという疑いは完全には晴れず、白い目で見られるようになりました。
夫は清子に逃げられたショックからか?記憶喪失から回復していました。
わずか2週間の間に、別人のようなリーダーとなっていたのです。
清子は妊娠に気づき、島と同化する女神のような感覚を覚え始めます。

どう転ぶかわからない展開で、視点を変えていき、飽きさせません。
しかし登場人物がかなり感じが悪くて、笑っちゃうほど。
ヒロインも太って図々しく、映画の女優さんとはだいぶ違いますね。
過去に置いてきた便利な日本での生活が途中で挿入されると強烈な違和感がありますが、これがまた、まともとも言い難いものだったり。
猥雑で皮肉だけど、異様なたくましさもあります。

桐野さんはデビュー作から知っていますが、ブログでのご紹介は初。
初期のミステリは感じが良かったんですが、地味めだったのが、ぐっとダークに化けましたね。

著者は1951年生まれ。
97年「OUT」で日本推理作家協会賞。
99年「柔らかな頬」で直木賞。
2004年「新潮」に短編「東京島」を発表。
2008年単行本刊行。谷崎潤一郎賞を受賞。

« チュニックと黒チュール | トップページ | 5月の花 »

コメント

想像していたのと違ったわ…(笑)
ヒロインがしれっと図太くいけど、けっこう失敗続きなのね。
でも、めげないところが、また…

しかも、東京にもどってから、前のことをすっきり忘れちゃってるところがすごいですよね。女は強いというか。

日本一不幸が似合う女、木村多江のイメージかというと、う~ん、意外とああいうタイプが図太いのかしら?

>marieさん、
あはは、設定の奇抜さがなんていうんでしょうか~予想外の方向へ?
そうそう、実は失敗多いですよね。
でも、たくましい!

映画はちょっと違いますよね…見てないけど。
夫に先立たれそうというイメージはあるかも。
肉感的な女優だと、そっちを期待されすぎるし?
「OUT」のドラマ化でも、主演はか弱そうで全然イメージと違ったけど、あれが合ってたら怖すぎるんですよね~。
そういう点もあると思います

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「東京島」:

« チュニックと黒チュール | トップページ | 5月の花 »

2019年10月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

カテゴリー

無料ブログはココログ

最近のトラックバック