フォト

おすすめ本

« アンモニャイトな夜 | トップページ | 「時の地図」 »

「スコーレNo.4」

宮下奈都「スコーレNo.4」光文社文庫

骨董店の三姉妹の長女・津川麻子の成長を丁寧に描いていきます。
スコーレとは学校時代のことのような~スクールの原義で、この場合は修行の段階?みたいな。
大人になってからが一番大事なのかも。
中学から4段階に分けて、それぞれの年代の悩みや、出来事。
誰でもどこかしら~共感を覚えることもありそう。

麻子が13歳、中学に入って三ヶ月の所から。
年子の妹の七葉(なのは)とはいつも一緒にいて仲が良いのですが。
七葉がとても可愛くて明るいので、妹に皆の注目が集まるため、比べると地味な自分が人に好かれるはずがないと思いこんでしまいます。
十代前半に身近な誰かに対して、こういった思いを抱く子は多いのじゃないかしら。
末の妹・紗英は小学校に入ったばかり。
無邪気で、幼い可愛らしさいっぱい。

子供の頃は七葉と二人して、父の店の物を眺めるのが楽しみでしたが、いつしか麻子が一人で父に色々見せて貰うようになっていました。
従兄の愼ちゃんも訪れるときには何か見せようと父が楽しみにしていたので、二人は何気なく仲の良い従兄妹同士として近づいていく。
ところが、ある日…?

派手になっていく妹とは、だんだん口を利かなくなります。
仲が悪いという程でもなかったのですが…
語学に力を入れていて、家から遠い、公立の大学。そういう条件で探し、確実に家を出たかったのでした。
申し込まれて彼氏が出来たこともあるけれど、長続きはしない。
これといってやりたい仕事もなくて困るのですが…

卒業して会社勤めをする日々。
輸入貿易会社を選んだのでしたが、最初の研修先が輸入物の高級靴店で、ファッションに興味のない麻子は戸惑います。
靴を熱烈に愛する店員と客の中で、出来ることのない状態。勧められて、べらぼうに高い靴を履いてみて、心地よさに驚きます。
そこに何故か2年もいることに。
初めての出張先イタリアで、美しい靴に吸い寄せられていきます。
それは骨董店で気に入った物を見つけた喜びにも似ていた…

麻子は真面目な性格で、ほとんど人に悩みを打ち明けることがないんですね。
出張に共に行った男性・茅野と、次第に良い感じに。
ゆっくりと進む恋の描写が心地良い。
妹も少し距離がありながら、それぞれにちゃんと成長していたようなのがうかがわれる所もほっとしますね。

「たったひとつの扉からいろいろなものが取り出せることを私は知っていた。
どうしても忘れられないもの、拘ってしまうもの、深く愛してしまうもの。そういうものこそが扉になる」
印象に残った言葉です。

著者は1967年、福井県生まれ。上智大学文学部哲学科卒業。2004年「静かな雨」でデビュー。
「日常の描写を繊細かつ丹念に積み重ねることで立ち上がる瑞々しさと、人物の真摯さとが魅力」と著者紹介にありますが、その通りですね。
本書は初めての書きおろし長篇。

« アンモニャイトな夜 | トップページ | 「時の地図」 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「スコーレNo.4」:

« アンモニャイトな夜 | トップページ | 「時の地図」 »

2019年10月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

カテゴリー

無料ブログはココログ

最近のトラックバック