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「ロマンス」

柳広司「ロマンス」文藝春秋

昭和8年、華族の若者たちが巻き込まれた事件とは。
戦前、時代の空気が変わりつつある危機感を味わいつつ、それぞれの心のままに生きる若者達。

麻倉清彬は子爵ですが、祖父がロシアの没落貴族の娘と結婚したため、父親はハーフ。
血筋を重んじる華族の中では異端で、孤立していました。
唯一の友人・多岐川嘉人は伯爵家の長男で、軍人。まっすぐな気性ですが、真っ直ぐすぎて変わり者。
その妹・万里子との3人が子供の頃からの仲良しでした。

清彬はフランス滞在中に両親を早く亡くし、迎えに来た大伯父の周防が何かと面倒を見てくれました。
周防は天皇からの信頼も篤く、たびたび召し出されているほど。
御猟場に連れて行ってくれて、銃を撃つことも清彬の遊びの一つとなっていました。

ある日、嘉人から身元引受人として呼び出されて上野のカフェに行って見ると、一室に死体が。
予約した部屋に入ってみたら、あったのだという。
清彬が口先で切り抜けて二人でその場を去りますが、この件以来、清彬はなぜか特高に目を付けられてしまいます。

スパイのような仕事をしろと、あちこちから持ちかけられるようになるのでした。
華族ではあるけれど異国の血が入った~微妙な立場のせいか。
華族は、六十余年前に公家や諸侯に変わって出来た呼び名ですが、日清日露の戦争で勲功のあった軍人が華族に叙せられたため、今では倍増しているという時期。
小善大善などといって、軍部は独断的な行動が増えていました。
大伯父の周防老人も、しだいに政局から取り残されていきます。
時代の流れは、どこへ行くのか?

多岐川万里子が、思いがけなく逮捕されます。
学習院および女子学習院の卒業生らが、共産党にカンパしたとして、治安維持法で検挙されたのです。赤化華族と揶揄された事件。
心情的に貧しい人に同情しただけで、政治的な意図は深くなかったのですが。
なぜか万里子だけが黙秘して転向を拒み、事態はこじれていきます。
一体何故…?

万里子が会いたいと言っているというので、出かけていった麻倉。
階級社会をなくさなければという万里子の言葉に「確信を持っているのですか」と問い返す。
「確信を持っているとしたら、それは幻想。人が何かを完全に確信しているとき、それは真実ではない。古今東西の歴史が証明してきた信仰の致命的な欠陥。同時にロマンスの教訓なのです」
この意味は…

時代色に興味をそそられます。
不安な時代相と、華族の微妙な立場、行き場を見失う鬱屈した青春。
汚くも描けそうだけど、主人公たちの若々しさが漂い、端正な印象があります。
すっきり解決というのではないけれど、余韻が残りました。

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