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「火怨」

高橋克彦「火怨 北の耀星アテルイ」講談社文庫

東北の蝦夷の戦いを、英雄アテルイ(阿弖流為)の若き日から描いて、ひじょうにカッコイイです。

東北は、蝦夷の土地。
724年に多賀城が築かれ、鎮守府将軍が置かれましたが、領土の境界線が引かれたまでのことでした。
ところが多賀城付近で黄金が発掘され、ちょうど東大寺で大仏建立にむかうところだったので、大きな魅力となってきます。
陸の奥に棲む蛮族と蔑んでいる蝦夷を、朝廷は威信をかけて征服しようとするのでした。
が、自分たちの土地を守ろうとする蝦夷の熱意と知恵に翻弄され、ほとんど負け続け…

もともと一つにまとまってはいなかった蝦夷。
胆沢の長の息子でまだ18歳だったアテルイが、朝廷深く入り込んだ人物・伊治公鮮麻呂(これはるのきみあざまろ)に将来を見込まれ、反乱を起こす契機となります。
頭の良い黒石の母礼(もれ)など、戦友との信頼が築かれていく様子に心温まります。

物部が蘇我に敗れて以来、奥地に暮らしていて、協力を申し出てきます。
物部氏は予想外に文明的な生活を営み、訪れたアテルイらも驚くことに。
もともとアラハバキの神を信仰しているという共通点があったとは。鉄床の神さまなのだとか。
山奥に青年を集めて兵士を選び、弓や乗馬の訓練を重ね、向いている役を選ぶのです。
戦いの行方も、勇壮。
この時代だと山川の自然を生かした騎馬と歩兵による戦いなので、一般人にもわかりやすいです。

大負けした朝廷側がいったん平和策に転じ、大伴家持を送り込みます。
既に高齢で穏和な性格で、彼が赴任中は大きな争いは起こらないのでしたが…

平和な数年が過ぎたが、またしても戦いが始まります。
この間にアテルイは、親友で参謀役の母礼(もれ)の妹・佳奈と結婚し、子供ももうけていました。
いよいよ坂上田村麻呂も、登場。
若い頃から天皇の信頼篤い近衛で、いずれは相手になろうと見込んで、京の都で店を構えている物部の天鈴が、アテルイら主立った若手を京都に招きます。
大胆にも敵のお膝元で、田村麻呂にも顔合わせしようというのです。
互いに好敵手と認め合う田村麻呂とアテルイ。
すぐには戦にはなるまいと知り、これは休戦期間同様と堅固な砦を築くのです。
遷都をめぐって、民の心を一つにするために蝦夷の脅威が語られ、政治的に利用されることになってしまいます。
蝦夷は元々は出雲の出で、後に入ってきた朝廷の祖先に追われ、東北へ移ったという由来も。それで追っても当たり前の獣同然と言い伝えられるのだそう。

時がたち、ついに田村麻呂が全権を握った上での戦いの時が。
対峙する両軍。
予想された戦いが行われず、アテルイの見込みが外れたため、離反する者が出たという噂が立ちます。
数年ごとの戦いで村は焼かれ、土地は荒れることの繰り返し…
闘う意味も知らない子供達に平和な暮らしをさせてやりたいと、アテルイは策を巡らすのです。
蝦夷の生き残りのために、自ら孤立していくとは…!
最後に、アテルイの意図に気づいた田村麻呂。
重厚な作品でした。

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