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「さんだらぼっち」

宇江佐真理「さんだらぼっち―髪結い伊三次捕物余話」文春文庫

人気の「髪結い伊三次捕物余話」4作目。
流れるような文体で、時代色たっぷりなのに、わかりやすい。

前作でお文の家が火事になって焼け出され、やっと夫婦になった伊三次とお文。
深川芸者の文吉として鳴らしたお文に長屋暮らしは無理がありましたが、お文のほうも、すぐ引っ越したいとは言わなかったのです。
長屋のおかみさん連中は皆よってたかって、炊事の面倒まで見てくれました。
ところが、思いがけない事件の余波で、お文は長屋を飛び出すことに…
これっきりになってしまう仲ではないけれど、ここは自分の居場所でなかったと、道に立ち尽くすお文の心情が哀しい。

伊三次が手伝いをしている奉行所の同心・不破が「お文に無理をさせたんじゃないか」というのは、優しいですね。
伊三次もくわしく事情を知って反省し、ようやく家を構えることにします。

「鬼の通る道」は不破の一人息子、龍之介が論語を習いに私塾に通うようになる話。
当時、素読吟味は侍の大事な教養で、試験もあり、不破の妻いなみが受けさせたがったのです。
伊三次がいなみのことをいつも褒めるので少し悋気したこともあるお文でしたが、いなみと知り合うようになって、深く納得しています。
しかし、どちらかというと剣術の方が得意な龍之介は、熱を出してしまう…?

「さんだらぼっち」とは、米俵の両端に当てる藁の蓋のこと。
桟俵法師がなまったものだそうで。
大切なお米を入れる物だから、使い終わった後にも、拝む物を乗せるのに使ったりするんですね。
木戸番の夫婦が、疱瘡が流行ったときに、このさんだらぼっちを家の棚に載せて拝んでいたのが外から丸見えで、夫婦に懐いて通う子供達がこの店のことをさんだらぼっちと言うようになり、挨拶するにも使ったのでした。
木戸番では木戸の開け閉てや夜回りの他に、日用品も置いて売っていて、お文も馴染みになります。

お文の女中だったおこなは、お文の家が焼けて居場所をなくし、水茶屋へ勤めに出ています。
正吉がおこなに気があって通ってくるので、正吉の親や番頭が心配して釘を刺しに来るのでした。
正吉もいささかぼんやりした若者なので、世間を知るようにと岡っ引きの増蔵親方の所に見習いに来ているのですが。
少し大きな米搗き屋の一人息子なのです。
おこなは、もともと水商売でそこの主人と結婚したこともある女だから、かたぎの店の女主人に迎えられることは、まずあり得ない…

前に湯屋に嫁いだもう一人の女中おみつは、妊娠。幸せになっていると思われたのですが。
お文とは、行き違いが起きてしまい…
所帯を持ったものの、波乱の続く時期になっていたんですね。
事件よりも、お文の心の葛藤が印象的でした。

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