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「葛野盛衰記」

森谷明子「葛野盛衰記」講談社

日本の歴史を裏側から眺めたような物語。
桓武天皇の若き日から、平家滅亡まで。つまり、まるごと平安時代ですね。
連綿と続く民の思い。
それぞれの思いに忠実に生き、時には存亡を賭けて戦い、不運に泣き、恋のもつれによじれ合う一族の命運。

寧楽(なら)の都を厭う山部皇子(やまべのみこ)は、乙訓の多治比の一族の娘・伽耶を愛し、彼女の住む山背の地に長岡京を築こうとしますが…
造営責任者が暗殺され、葛野(かどの)川の水害も起こり、10年で断念。
上流に平安京を作ることに。
女帝の時代には傍流だった桓武天皇。母の出自が渡来系で低く、異母弟が立太子していたのですが、政争の果てに帝位が巡ってきたものでした。
伽耶は心から帝を愛しながら、森が恐ろしくて、住み慣れた家を離れることが出来ない。
やはり多治比の娘で伽耶には姪のような存在の真宗が、後に自分なら都へ行けると決意して、帝の後宮に入ります。
葛原(かずらわら)親王を生んで、これが後に臣下に降りて桓武平氏の祖となるのです。
真宗の双子の兄・耀(あかる)は、森に棲む少女に魅せられ、出奔してしまったままでしたが‥

藤原縄主(ただぬし)は、桓武の東宮・安殿(あて)親王に娘が入内したのですが、大極殿のすぐ脇にある森で鳥に襲われ、屋敷の奥深く引きこもって暮らすしかなくなります。
母親の薬子が、身代わりのように安殿親王と関係が出来てしまい、醜聞となりましたが‥
怨霊に脅える親王は、平城天皇となってからも、薬子でしか安らげない。
有名な薬子の乱に繋がりますが~当事者にとっては乱というような実感はなかった成り行きなのかも。

森に棲む魔とは。
北の地に住み着いた秦の一族とは…?
やがて、天皇の娘が賀茂の斎院に。
巫女となる女性が少女の頃から出てきて、不思議な雰囲気を醸し出します。

平忠盛に嫁いだ宗子の視点、その息子の頼盛の視点から、後半を描きます。
次男の頼盛は正妻の子でありながら、清盛と比べると傍系のごとき扱い。
後白河院と平清盛という強烈な個性を持つ二人に振り回される人生。

本当としか思えなくなるような説得力があり、面白かったです。
長い歴史のポイントを丁寧に描写し、ややこしい人間関係もぐいぐい読ませる筆力はさすが。
宴の松原、糺の森、賀茂神社、広隆寺。
今の京都に残る有名な地名や寺、仏像もまんま出てくるので、おそるおそる覗いてみたくなります。

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