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「ティモレオン」

ダン・ローズ「ティモレオン―センチメンタル・ジャーニー」中公文庫

迷い犬のティモレオンが出会う色々な人々。
強烈な印象を残す作品です。
センチメンタルというには~残酷だったり滑稽だったりしますが…
切なく、美しい。
世界25ヵ国で飜訳されたそうです。

元劇作家で初老のコウクロフトは、たまたまテレビ出演中に口走ったことから仕事を干されて、今はイタリアに住んでいます。
何度か恋人が出来たけれど、いつも男は出て行きました。
40歳以上年上の男が好きだという美少年も、幸福なひとときの後に、かって老人を裏切った男の元へ去りました。

孤独な暮らしで、犬ももう飼うまいと思っていましたが、2歳ぐらいの野良犬が迷い込んできて、飼うことになります。
ティモレオン・ヴィエッタと名付けて可愛がるコウクロフト。
どこにでもいるような毛並みの雑種。野良犬にしては目が無邪気な少女のように愛らしい。

酔っていたときに話した冗談を頼りに、若い男が訪ねてきて、住み着くことに。
ボスニアからボートで亡命してきたという不審な男。その日暮らしに飽きていて、家の修理をしながら呑気にうまいこと暮らそうとするのでした。
愛しているわけではないけれど、孤独に戻るのが怖くて、追い出せないまま言いくるめられる老人。

自称ボスニア人はとんでもない男で実は追われており、ティモレオンが警戒するのも当然だったのですが。
ティモレオンと折り合いが悪いのに、コウクロフトは胸を痛めていましたが、ある日、ボスニア人が犬を追い出さなければ殺すと言いだし‥

ローマに置いて行かれたティモレオン。
家路を探す途中で、様々な人とすれ違い、餌を貰い、ふとしたきっかけとなり、他の名で呼ばれ、飼われそうになったりもするのです。
バス停でティモレオンを見かけて、妻のために連れ帰ろうかと思う警官。
イタリアまで会いに来た恋人に振られて呆然としていた少女が、いろんなお菓子を投げてやったり。
中国で出会った未亡人と娘を連れ帰った教授だったが、心臓発作でなくなり、その葬式に通りかかるティモレオン。
耳の聞こえないが優秀な娘オーロラと恋人の話。
ルチーアとピエトロの授かった美しい娘ローザ。身体は成長したが精神は止まったまま…

ティモレオンは、出会った人の事情を知るわけではないのです。
ごく浅い縁ではありますが、それぞれのエピソードが美しくも痛切で、珠玉。何とも胸が痛くなります。
犬が酷い目に遭うのはどうしても読みたくない人には不向き。
早く忘れてしまいたいシーンがあるから。
ただし、読後感は意外にさわやか。
人間の方もじつに様々な運命に翻弄されていて、えらい目にも遭い、恥多き人生を生きている。
犬に対する態度は、その人そのもののよう。
とくに酷いことをする奴は、どうせこの後、ろくな事にはならなそうで…
犬の無垢さが際だつ印象が残ります。

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