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「千年の祈り」

イーユン・リー「千年の祈り」新潮社

中国系の女性作家が、英語で書いた小説。
処女短編集とは思えないほど、絶賛されたことはあるだけの出来です。

「あまりもの」は林(リン)ばあさんの哀切な人生。
縫製工場が事実上倒産して、形の上でだけは名誉退職ということに。
市場のおばさんの紹介で、一人暮らしの病気の老人の後妻になります。
息子の誰かが毎週様子を見に来て、お金をおいていくのでした。
2ヶ月で亡くなり、遺産は入りませんが、仕方ないと思う林ばあさん。
学校の寄宿舎の仕事を紹介してくれただけ、有り難いのです。
寄宿舎に置かれたまま家には帰れないでいる男の子・康(カン)と親しくなります。それが一番、恋に近い物だった‥

「黄昏」は蘇(スウ)夫妻の話。
脳性麻痺の娘をひっそりと育てています。息子は家に寄りつかないのでした。
家に人を招くことも出来ないで暮らしていましたが、ある日‥?

「不滅」は、宮廷で出世した宦官を出した町の物語。
ファンタジックです。

「死を正しく語るには」は、作者自身の子供時代を描いた作品のように思われますね。
夏と冬の一週間、厖(パン)夫妻の家の滞在するのは、教師をしている厳格な母から逃れられる時期でした。
ふだんは北京郊外の研究所の中で暮らしている少女。子守だったパン夫人の元を訪れるのが楽しみだったのです。
パン夫人の夫は労働者階級の敵である地主の息子だったという理由で職を失い、家計は夫人がまかなっています。
間借りした宋家は、家賃も払わないまま居座り、勝手に増築までしている有様。
パン氏が後に強盗に刺されて死んだとアメリカで聞き、若い頃の宋家の4人兄弟が笑いながら話す所を思い浮かべる主人公。
その前に亡くなっている夫人が知らなくて良かったと思うのです。だが一緒に話をして、服をたたんだり出来たらとも思うのでした。

表題作は、アメリカに住む娘の元を訪れた父親。
なかなか気持ちが通じ合わない。
親子が出会うには、何年の祈りが必要だったのか‥

作者は1972年北京生まれ。
文革も経験しつつ、直接は波をかぶらない。というのは親が核開発に関わっていたため、研究所の中で育ったのですね。
北京大学卒業後の96年、アメリカに渡ったという経歴。
2004年「不滅」で各賞受賞。
カリフォルニアで夫と息子二人と暮らしているそう。
中国語では抑圧されていた部分があって、英語の方が感情を吐露しやすいとは。
多様な経験と、希有な想像力。

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