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「薬指の標本」

小川洋子「薬指の標本」新潮文庫

しっとりした雰囲気の不思議な短編集。2本収録。
やや暗めなトーンだが、静かで、毒はかすかに…透明感のある独特な世界。
短いので、すぐに読めます。
ひっそりと~一人こもっていたい気分の時には、最適?

サイダー工場の事故で、薬指の先が少し欠けてしまった主人公の女性。
サイダーが飲めなくなって退職後、歩いていてたまたま、標本を集めているという館の事務員募集に気づいて、応募します。
古い4階建てのアパートを買い取って、標本室を経営している標本技術士の男性・弟子丸にだんだん惹かれていくのでした。

ふしぎな標本が魅力的。
自分の家には持っていたくないが、保存はしておきたい物が持ち込まれるのです。
気持ちの区切りをつけるような物かも知れませんね。
品物相応の金額を受け取り、誠意を持って保存する。
依頼者は、いつでも自分の標本と対面することが出来るというシステム。
もっとも、対面を希望する人はほとんどいないのでした。

「わたし」の仕事は一人で事務室に勤務し、電話を掛けてきた人に標本室の趣旨を説明して、持ち込まれたら書類を作るだけの仕事でした。
持ち込まれる品物の種類は数限りないので、退屈するということがありません。
楽譜だけでなく、音を保存して欲しいという依頼など。
火傷で頬に残っている傷跡を標本にしたいと言ってきた少女がいつ帰ったのか、姿を見ないことが気になってきます。
やがて、自分の薬指を標本にして貰おうと考え…

「六角形の小部屋」は、カタリコベヤの話。
一人でこもって言いたいことを言うという、防音らしいが狭い、それだけの部屋。
ふしぎな母ミドリと息子ユズルが、それを持ち歩いているという。
仕事というには儲かりそうもないが?
なぜか必要な人は吸い寄せられるように集まってくるのだと。
穏和で礼儀正しい親子との会話が日常的でもあるような、人間じゃないものとの交流でもあるような。
主人公は、結婚直前で相手を嫌いになってしまい、それを上手く説明できないまま、別れてしまっていました。
以来、背中が痛むのですが…
カタリコベヤで一人で喋ることで、癒されていくようでした。

著者は1962年、岡山生まれ。88年、海燕新人文学賞を受賞。
91年、「妊娠カレンダー」で芥川賞。
2004年、「博士の愛した数式」で本屋大賞を受賞。
この作品は94年発表。

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