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「エアーズ家の没落」

サラ・ウォーターズ「エアーズ家の没落」創元推理文庫

サラ・ウォーターズの新作。
「半身」「茨の城」「夜愁」に続く長篇4作目になります。

英国のウォーリックシャー地方で、200年以上の歴史を誇るハンドレッズ領主館。
近在で診療所を営む医師ファラデーは、友人デイヴィッドの代診で、館へ往診に出向くことになりました。
じつは母親がメイドとして館に勤めていたことがあり、30年前に一度、園遊会の時にこっそり入ってみた思い出があったのです。
館がすっかり寂れている有様に、驚愕することに。

家族は、先代の奥方エアーズ夫人と娘キャロラインと息子ロデリック。
奥方は美しかった名残をとどめて品のある女性ですが、昔を懐かしむばかり。
館の当主となった息子は責任を感じて奮闘していますが、経済的な危機は土地を切り売りしても追いつかない。
見るからに具合が悪そうで、戦場で顔にも火傷を負い、足を引きずる状態。
娘のキャロラインはしっかりした様子でしたが、身分に似合わぬ家事もしていました。
美人とはいえず、あまりの貧しさに将来の道は閉ざされそうだったのです。

部屋は一部しか使っておらず、住み込みの女中はまだ少女のベティが一人いるだけ。
そして、次々に怪しい出来事が起こってくる‥?
文学的な雰囲気ですが、内容はゴシックロマンとミステリとホラーとの融合?
なめらかな文章で、複雑な話もわかりにくくはありません。
ダークで謎の多い展開、精緻な描写で、ぐいぐい引きこまれます。

ロデリックが心労のあまり館を離れることに。
残されたエアーズ夫人と令嬢キャロラインを放ってはおけない気持ちのファラデー医師は、ますます頼りにされます。
令嬢キャロラインは地味な外見だが芯は強くいきいきとして、ファラデーとは身分も違うのですが、しだいに心が通い合うように。
不器用な二人の接近ぶりと行き違いがありありと描かれてまた、見事です。

館の壁に妙な文字が浮かび出て、それを見た夫人は何か思う所がある様子、だんだんと閉じこもっていきます。
幼いときに死んだ最初の子スーザンを夫人は誰よりも愛していたのでした。
スーザンの霊?それとも、夫人の思いなのか、何者かの作為なのか、無意識の生き霊?館にこもる怨念なのか?
あくまで科学的に捕らえようとするファラデーですが…?

どんどん崩壊していく館のものすごさ。
ホラー好きな人を満足させる~じわじわと盛り上がる描写。
厚みのある設定でリアリティがあり、単なるホラーではありません。
何通りにも解釈が成り立ちそうで、どれも怖い…
ウォーターズはすごい!

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コメント

これこれ!
コワイお話でしたねえ。ホラーかミステリか。
どっちに解釈してもいいかとは思うのですが、わたしは、ミステリだったらと思う方がこわいです。幽霊より生きている人間の悪意のほうがこわい…
何回も読み直したのですが、どっちか分かりませんでした。sanaさんは、どう思われますか?
それはともかく、没落した旧家ってたいへん…

marieさん、
怖かったですねえ~!
もう筆力あるから…
私はウォーターズならではのどんでん返しがあるのかと疑心暗鬼でドキドキしました。
悪意だったら、確かにその方が怖い!ひえぇ…

私は超常現象はあったと思います。
計画的なものだけでここまでは…
ただ、人の気持ちが反映している超常現象も含まれている気がしました。
単なる館の霊(単なる?)みたいなのではなくて。
これ以上はねたばれになるから、書けない~~

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