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「廃墟に乞う」

佐々木譲「廃墟に乞う」文藝春秋

直木賞受賞作。
北海道警察物の~やや異色な短編集。
捜査時に負った精神的外傷で休職中の刑事・仙道孝司が、いろいろ相談を持ち込まれて、非公式に調査に力を貸すことに。
この設定が生きていて、変わった角度からの渋みのきいた展開になっています。

「オージー好みの村」は、オーストラリアからの滞在客が多いニセコのスキー村の事件。
仙道の療養生活も、11ヶ月目という時期。
知人の女性から、仕事仲間のオーストラリア人に容疑がかかっているため疑いを晴らして欲しいという依頼でした。
現場に行ってみると…?

「廃墟に乞う」は、温泉に来ていた仙道が、かっての同僚から連絡を受けます。
船橋で風俗嬢が殺された事件に、13年前に札幌で起きた事件と通じる点があったのでした。
その時の犯人、古川がもう出所していたのです。
古川の郷里の寂れた町を訪れる仙道。
炭坑が廃墟となり、そこで育った古川は想像を絶する貧しい暮らしをしていました。
題名のニュアンスが最後のシーンに響くよう。

「兄の想い」は、漁師町の事件。
逮捕されたのは実行犯には間違いないのですが、事情を調べてくれと頼まれる仙道。
真面目な若者なので、何か理由があるに違いないと…

「消えた娘」は、行方不明の娘を捜す父親からの依頼。
連続婦女暴行犯の部屋から、娘のバッグが見つかったと連絡が来たのですが、死体がないので捜査本部は開かれない。
どこから、捜査の手をつけるのか…?
時には邪魔者扱いされつつ、担当に花を持たせたりして。

「復帰する朝」は、知人の女性からの依頼で、妹がマスコミに囲まれて困っているという相談。
仙道が、思い出すと恐慌を起こすようになった問題の事件後、3年近くたっている。
当時の相棒と、久々に連絡を取り…
有名な事件を想起させる部分もあって、それはきつかったろうと思わせますが、そのままではない使い方になっています。

犯罪を憎む気持ちはとくに強調されてはいませんが、根底に強く流れていると感じました。
引き締まった文章で、哀しみがただよい、格調高いです。

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