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「ポトスライムの舟」

津村記久子「ポトスライムの舟」講談社

2008年、第140回芥川賞受賞作。
確か~芥川賞候補と知って読み始めた作家さんですが、肝心のこれは読んでなかったのに気づいたので。

主人公は、29歳の派遣社員・ナガセ。
職場に貼ってあるポスターを見て、世界一周旅行の費用163万円が、工場での年収とほぼ同じと気づきます。
ほかにパソコン講師や、友達がやっているカフェのウエイトレス、データ入力とバイトも3つ掛け持ちしているので、年収分を貯金できないかと思い立つのでした。
特に目標もなく真面目に働いて淡々と生活している女性。
内心はほとんど描かれず、どちらにしても激しい動揺はない様子で…男性の影がちらりとも見えないのが~いっそお見事!?

同級生3人の違う生き方とさりげなく交錯させながら描いて、上手いです。
故郷を離れて奈良に来て、店を出しているヨシカ。
結婚して二人の子供がいるが、愚痴っぽく空気が読めないそよ乃。
子供一人を連れて離婚しようとするりつ子。彼女の行動が一番大きな出来事かな…
りつ子の子を喜んで世話する自分の母に、孫が欲しいのかと考えるナガセ。
ところが、母は~意外な返答をしてのけるのです。

同時収録「十二月の窓辺」
主人公の女性ツガワは、新入社員。
大卒の正社員なのだが、後から配属されて同じ立場の人間がいないため、孤立してしまう。
女性上司Vのいじめというか異常に叱りつけるモラルハラスメントに遭い、自尊心が砕けていく描写がものすごい。
これは、実体験がいくらか反映しているのでしょうねえ…
部下や同僚はかばうことも出来にくいかも知れないが、この異常事態を上司は気づかないのか…?!

唯一話の出来る先輩との交流、職場近くで起きている妙な事件、向かいのビルで見かけた暴力を通報するなど、予想外の展開も。
キャラは違うんですけど~最初の話の主人公が、就職したばかりの時の話、とも読めます。
後味は救いもありますが、考えさせられます。

最初の話はやや淡々とし過ぎている程なので、これが芥川賞?という印象がないでもないところ。
2本目の強烈さが陰影を増しています。この数年後かと思うと、まあ…明るい人生とは言い難いのも無理ないような。
とはいえ、自分の力で働いて、誰にも文句は言わせていない~決して酷くはないので、十分なのか?
また微妙な感慨があるのでした。

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