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「夜想曲集」

カズオ・イシグロ「夜想曲集:音楽と夕暮れを巡る五つの物語」早川書房

カズオ・イシグロでは珍しい短編集。
副題通り、それぞれに音楽をテーマとし、夕暮れがモチーフになっています。
ヨーロッパの片隅で、男と女の出来事が…
奇妙な出会いや、どこかもの憂げなムードも共通しています。
ほろ苦くも切ない、芳醇な味わい。

ヴェネチアのサンマルコ広場でギターを弾いている男が、母が大ファンだった往年の歌手を見つけ、興奮して話しかけます。
その歌手は奇妙な依頼をしてきて、ギター弾きはいぶかしく思いつつも、彼の妻のために演奏をするのですが。
この夫婦はやり直そうとしているのか、別れようとしているのか、それとも…?と引き込まれます。
独特な風合いが濃厚な手応え。

音楽家を目指してチャンスを待つ若者が、民宿の仕事をしつつ悩む話や、才能がありすぎる?音楽家が誇り高さから先生につけず、進む道を迷う話など。
全体として、意表をついた視点の面白さと、なかなかない苦みとユーモアで、うわ~まいったな!という。
作者が若い頃はミュージシャンを目指して何年も過ごし、挫折した経験があることを考えると、この濃厚さも納得。
いや、違う道もあるんですよ!…でもね…
登場人物の命運にもまた、感慨がありますね。

この本を読んだのはだいぶ前で…実は1月。
なんか言葉が出てこなくて。
「わたしを離さないで」もあの長さにしては恐ろしく読むのに時間かかったし。私にとってはそういう(どういう?)作家さんです。

私がカズオ・イシグロを読み始めたのは映画化された「日の名残り」から。
「わたしを離さないで」がなんといっても印象的で、精緻でもの哀しく、あたたかさと清らかさがあって、大好きです。
初期の「女たちの遠い夏」(「遠い山並みの光」と改題したそうですが)は、戦後の混乱期に母に愛されなかった娘が、大人になって自分の娘と上手くいかないという話でちょっと暗いので~誰にでもオススメというわけにはいきませんけど。
もちろん筆力は十分、感じられました。

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コメント

出たときにすぐに買って読みました。
なんというか、うまいんだけど正直に言うと感心はしても感動まではしなかったかも・・・うますぎてちょっと作為的に感じてしまって、わたしにはリアリティが感じられないというか。
リアリティって、発想がぶっ飛んでいるか否かではないと思うんですよ。とんでもない世界を構築していても、すぐに世界に入れてリアルを感じる作品もあるし(「私を離さないで」はまさにそういった作品でした)、どこにでもありそうな話なのにリアリティを感じない作品もありますよね。
このひとはやっぱり長編の作家のような気がするんですよねぇ。
ジュンパ・ラヒリのようなタイプではないと思うんです。
あの人は長編もできるのがすごいけど。
そういえば、短編の名手は長編もできる場合が多いけど、逆は真ではないようなことを作家の誰かが言っていたなぁ。
キャラはみんな好きでした。
最初の方に出てきたお金持ちのおじさん(主人公をチャーターする人ね)とか。この奥さんがタイトルになっている「夜想曲」につながるのも面白い。「夜想曲」は、いい意味で一番「らしく」なくてよかったかな。ホテルの中の探検とか、トロフィがすっごくつまんないものであるところとか、ニヤニヤしながら読んでしまった(笑)

しあんさん、
あ、やっぱりぃ~絶対、読まれてますよね
すごく上手いですよね。
煮詰めたように重くて、変化に富んでいて、ややお腹にもたれるというか。
なんか紹介が難しくて……あんまり好きじゃないって事?ならやめようかなと思ったほどでした。
他の作品の印象もくわえて書いたら何とか、まとまったんですよ
「わたしを離さないで」はお気に入りなんですけど~近年ではなぜか恐ろしく読むのに時間がかかった本なんです。丁寧に味わいたかったんですね。
それだけ…特別な才能あるというか?
結末とか短編の形にはなってるけど、この雰囲気作りを生かすには長編の方が向いているのかも知れませんねえ!

あ、トロフィがすごくつまんないとか、面白かったですね!
ホテルの中の探検、楽しかったです~

カズオ・イシグロ、好きなんです~
あの雰囲気がいいですよね。

この短編集、なんだかあんまり評判よくないように感じたのですが、先日、やっと図書館で借りて読みました。
なんだか、期待していた内容じゃなかった…
この後、日の名残りを読み返したのですが、やっぱり完成度というか、行間に漂う哀愁というか、こっちよね、こっち!という感じで。イシグロさんは長編タイプでは?

marieさん、
読まれたんですね~!
え、評判良くなかったですか?
アマゾンで検索したら、評価は高いですね。
…もしかして、私のせい?
ブクログの方も見たら、★5つにしてありました。あのほうが読んだ直後の評価なので、星については実感こもってます。

「私を離さないで」がいちばん好きだと、あのムードや繊細さとはちょっと違うっていう事かしら。
「日の名残り」のほうが近いですよね…

技巧的で、濃厚で、短編を読もうとするときに期待するよりも重い?
出来が悪いわけではないので、微妙な感覚を表現するのがちょっと難しいんです~

sanaさん
ご心配かけてごめんなさい~!

もちろん、作品が素晴らしいのは分かっているの。
ただ、なんとなく、それがわたしが求めているモノと違うというか…
なんでだろうと考えてみると、たぶん、お話が終わってからの登場人物のその後がすごくすごく気になるから、かな? 

marieさん、
わあ、再度ありがとうございます!
そうですよねえ~すっごくレベル高いんですよね。
私にとっても好きな作家に入ると思うんですが、説明しにくい作家でもあるような。

求めているモノと違う…
登場人物のその後が気になる!
確かに~そんな感じはありますね。
なんだろう…この感じ?
一つ一つ、もっと長い作品にして貰った方がいいぐらいなのかしら~??

どーも。しあんです。
ご無沙汰過ぎてクッキー消えてました~
うーん、この記事、ほぼ一年前のものだったんですね。
実は先日、「英国王のスピーチ」を観に行ったときに、「わたしを離さないで」の予告編を見たので、そうだ、sanaさんにお伝えしよう、と思って、久々にお伺いしたら、marieさんのコメントのおかげで上がっていたので、これはいいタイミング、と。
「わたしを離さないで」が映画になるって言うのは聞いた気がしていたんだけど、もうできあがっていたんですね。
3月26日公開だそうです。
でもねぇ、なんというか、原作とはちょっとイメージ変えてあるようなんです。
マキューアンの「贖罪」が恋愛ドラマみたいになってしまったように、なんだかそっちの方向へ持って行こうとしているような。
確かにあのままだと映画化するのが難しいとは思うし、興行成績を考えれば、ある程度お客を呼べる演出が必要とは思うけど、「私たち、愛し合っているんです」ってのは違うと思うの・・・・・
観ないで批判するのも何ですので、観に行こうとは思っていますけど。

しあんさん、
ようこそ~
わあ、「英国王のスピーチ」見たんですか!いいな、いいな♪
夜想曲集、1年近く前なんですね。

カズオ・イシグロ・カテゴリの2冊、「わたしを離さないで」が2007年というのにもちょっと驚き…けっこうたったんだなあ…
映画化ですか!
公式サイト見てきました。孤立した寄宿舎ってのは感じ出ていそう。わ、ランプリングが校長だ。
愛が本物なら数年の猶予が…っていう展開?!

「贖罪」は妹が主人公じゃなくて、姉と恋人の物語になってたのかな?見てないけど~映画だとそうなりがちですかね…

うわ!グッドタイミング~
実はわたしも「英国王のスピーチ」この間の日曜日に見に行ったんですよ!でも予告編は見なかった…残念。
その帰りに、偶然「夜想曲集」の文庫を手にとってみたら、解説にこれは喜劇だ、みたいなことが書いてあって、あ、そうなんだ、だったらそりゃあ期待してたものとは違うはずだわと納得しました。

「わたしを離さないで」は、冷静になって考えるとかなりリアリティのない話なんだけど、読んでいるときはイシグロマジックにかかっていて気がつかない。映画になったらそのへんはクリアできるのか心配…

marieさん、
「英国王のスピーチ」いらしたんですか!
イギリス映画繋がり~~☆
コリン・ファース、いい役者になりましたねえ。
「眺めのいい部屋」と「アナザーカントリー」を見た頃を思い出すわ…

帰りに「夜想曲集」?!
喜劇…そ、そうでしたっけ。…まあ悲劇というのでもないのはそうですね…
人間喜劇みたいな感じはありますね。

「私を離さないで」はしっとりした雰囲気がイシグロマジックなのかな?
SFぽく書かれたら~もっと入りにくいかも~?

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