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「博物館の裏庭で」

ケイト・アトキンソン「博物館の裏庭で」新潮クレスト・ブックス

ルビーという少女を主人公に、さかのぼって4代にわたる一族を描いた小説です。
1952年、英国の古都ヨークで、母が受胎した瞬間の胎児の独白から始まります。
胎児のルビーが、いとも冷静に不仲な両親を描写するという。

博物館というのはヨークにある博物館のことで、一家にはおなじみの場所。
歴史ある土地柄で、川岸には化石なども見えるのでした。
ルビーと気の合わない生意気盛りの姉たちなど、みっちりと濃密でにぎやかな家庭の有様が描かれます。
親や夫に、そして時代に翻弄されつつも~たくましい庶民の女達を中心とした~戦争と平和の物語。

父のジョージは浮気者。
最初はペット屋、後に医療器具の店を経営。
母のバンティはしつけの厳しい母親でしっかり者だったのですが、夫の浮気に切れたのか一度家出したこともあり、一時は自分にも浮気相手が登場。
家族旅行の騒動には、大笑い。
街で2番目にテレビを買い、女王の戴冠式をテレビで見るのに近所の人が集まったり~時代色が出ています。
大量のお菓子を用意する様子など、なかなか食べ物は美味しそう。

バンティの母である祖母ネルは大人しい女性で、戦争で2度も婚約者を失い、残った男性と結婚するしかなかったのです。
ヨーロッパの無惨な戦場から一時帰還した婚約者は、教えられたとおりに武運を祈るネルに違和感を感じたりと、さまざまなことがあります。
婚約者が戦争中に訓練していた犬の話は…泣けました。

祖母ネルの母アリスは、育ちがよかったのに貧しい暮らしに追われ、ある日突然行方知れずになります。子ども達は母親が死んだと聞かされました。
実は、駆け落ちしていたのです。
アリスの従妹のレイチェルが世話をしに来て、そのまま後添えになりました。
これは実母アリスよりも貧しい育ちだったのですが、主婦としてはずっと有能、ただし意地悪なところがありました。

ルビー自身の人生も、なかなかそう単純にはいかないのです。
長姉がエルヴィスからビートルズへとすぐ心変わりし、やがてジョーン・バエズに憧れて黒髪を真っ直ぐ垂らし、瞑想するようになるなど、細部が何ともいきいきしていて、おかしみがあります。

要所々々に繰り返し登場する~古ぼけた写真の主やその意味、ウサギの足のお守り、ピンク色のボタンなど小さなものが家族に伝わっていく…
家系の中にあるいくつかの謎が最後の方になってわかってきて、カタルシスになります。

著者は1951年、ヨーク生まれ。家業は小説と同じですが、一人っ子だそうです。
博士号を取り損ねた後、小説の投稿を始め、86年短編で一等をとり、95年初の長編の本書でウィットブレッド賞受賞。

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