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「またの名はグレイス」

マーガレット・アトウッド「またの名はグレイス」岩波書店

カナダを代表する作家の最高傑作といわれる小説。
1843年にカナダで実際にあった有名な殺人事件を元に、実像に迫っていきます。

たぐいまれな美貌の娘グレイス・マークスは、下働きの女中。
家の主人と、その愛人であった女中頭ナンシーを、解雇されたのを恨んだ若者が殺した事件で、若者は死刑。グレイスは共犯として終身刑になったのです。
当初の自白は強要されたという説もあり、三通りの告白があるんだそうです。
一部の記憶を失ったグレイスは、亡き友メアリーの名を名乗ることもあったという。二重人格か憑依か詐称か?
謎めいた事件だったんですね。

たった15歳だったグレイスは、30年服役することになるのですが…
事件から16年後、服役中のグレイスの記憶喪失を治療しようと少壮の医師サイモン・ジョーダンが訪れます。
丁寧に話を聞くサイモンに、やや戸惑いながらも次第に心を開くグレイス。
彼は作者の創作ですが、彼の視点を借りつつ、明らかな史実はそのまま使い、どちらとも言えない部分は独自に想像を交えてまとめています。

グレイスは模範囚で、懲治監でも監長夫人の小間使いのように働いていました。
冷静に見える美しいグレイスは、悪女か犠牲者か?
貧しい生い立ちや女中の厳しい生活ぶりが地道に語られる一方、上流社会にもある様々な人間模様や、グレイスの幻覚のようなイメージも展開、小説技法を駆使して、飽きさせません。

時代は精神医療の走りの頃で、善意もあるけれど偽善的な空気もあり、降霊会がはやる一方、否定する医者ももちろんいて、様々な要素が混在しています。
知識階級で誠意はあるが、弱い面も持ったサイモンの右往左往ぶりも何とも皮肉な描かれようです。
救いはありますが、疑問もまたわくような~余韻のある結末。 
作者は1939年生まれ。1996年の作品。

ちなみに~アトウッドを最初に読むなら「寝盗る女」をおすすめ。
悪女にえらい目にあった3人の女性が会う話で、面白おかしく描かれています。

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コメント

あー、これ、買うの忘れてた!
思い出させて下さってありがとう!
早速昼休みに注文、注文。

しあんさん、
おー、そうでしたか!
これは読んで損はないですよ。
(怖い所があるから櫻子さんには無理だけど…)
感想も聞かせて下さい

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