「わたしの美しい娘」
ドナ・ジョー・ナポリ「わたしの美しい娘」
童話の「ラプンツェル」を題材にした再話。
舞台は、16世紀半ばのスイス。
ツェル(ラプンツェルの愛称)は、ゆたかな金髪で濃い眉のチャーミングな娘。
母と二人きり睦まじく、山の斜面の牧草地でヤギを飼い、暮らしていました。
13歳の誕生日を前に街の市へ行って、伯爵の息子コンラッドと出会います。
鍛冶屋でコンラッドの馬が脅えていたのを優しくなだめることの出来た少女ツェルと、少女へのお礼に鴨の卵を一生懸命探すコンラッド。
一方、娘の誕生日のお祝いに心づくしの紙やインクを買い、美しい服を縫っていた母親でしたが…
母親は娘を隠すために命を狙われていると嘘をつき、人里離れた塔に閉じこめてしまいます。母を頼りにしながらも、次第に疑い出す娘。
貴族の息子コンラッドの方でも、縁談を断り、たった一度会っただけのツェルを捜し続けていました。
かって魂を売り渡してまで隣家の赤ちゃんを我がものにし、独りで育て上げた母の心も哀しく、愚かでも痛ましい。
時代は違うけれど「八日目の蝉」をちょっと思い出しました。
ラプンツェルって、レタスのことだったんですね!…そういえば、童話はそんな話だったかなあ…
(隣家の若妻がレタスがどうしても欲しくて盗んでしまい、赤ちゃんを奪われるという)
童話のように簡潔に絞られた文章に深みがあり、移りゆく運命と共に流れゆく情景が詩のように魅力的です。
ヘンゼルとグレーテルが題材の「逃れの森の魔女」も良かった作者。
言語学の教授だそうで、5人の子の母でもあり、幅広い著作があるとか。なんとも才とエネルギーに恵まれた人のようです。
もっと翻訳してもらえれば~嬉しい限り。
これは2008年9月発行。1996年の作品。
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