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「警官の血」

佐々木譲「警官の血」新潮社

三世代にわたる警官一家の歴史を淡々と書ききった大作。
戦後すぐに警官となった安城清二が一代目。
上野界隈が浮浪者で溢れていた時代から、次第に復興していく有様が描かれます。
今から考えると想像を絶するようで、歴史的な興味がわきます。
軍隊帰りの清二は、民主主義の時代に希望を抱いて、息子には民衆の英雄という意味で民雄と名付けます。
民雄って古くさい響きだけど、そういう意味だとは…

清二は穏やかな家庭を築き、人情味のある駐在として人望を集めますが、天王寺の火災の時になぜかその場を離れ、鉄道事故で死亡。
現場を離れたのが不審に思われて自殺説も出たほどで、殉職扱いにはされなかったのでした。

息子の民雄はその時、8歳。父と同期の「血の繋がらないおじ達」の援助で高校を出、警官に。
父のような駐在になりたかったのですが、心ならずも公安の仕事を任ぜられます。北大に入学してまで学生運動のスパイに入り、やがて神経を病むようになってしまう。内ゲバの始まりそうな時代、学生運動に潜入する様子はスリリングです。
父の死の謎を解くのが警官になった目的の一つでしたが、それもなかなか果たせません。
やっと願いがかなって駐在になった民雄は、人が変わったように穏やかに。
ところが、人質を取った強盗事件で、殉職となります。

民雄の息子・和也は、子どもの頃は母を殴ることがあった父に反発していましたが、後にはやはり警官に。
意外にも上司の内偵を命じられ…
祖父と父の扱っていた事件を密かに捜査し、不審な死の謎を追います。
その時代の特徴を表す事件や警察組織の変容が描かれていて、面白かったですよ。
かねてからの知り合いと所帯を持った清二、療養中に知り合った娘と結婚する民雄、救急救命士と恋愛する和也、とお相手にも時代が現れています。

全体として事実関係がわかりやすく捌かれていて、特別な濃厚さや甘さはないんですね。大人の男性の目には社会はこう映っているのだろうなあと感じました。
2007年9月発行。

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