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「パワー」

アーシュラ・K・ル=グウィン「パワー(西のはての年代記3)」河出書房新社

三部作の完結編ということです。
奴隷として育った少年ガヴの運命の転変を丁寧に描いて、何とも読み応えのある書きっぷり。

西のはての都市国家エトラ。
水郷の民から幼いときにさらわれて、アルカマンドという裕福な一家の奴隷となった姉のサロと弟のガヴィア。
家族的なあたたかい暮らしの中で教育も受け、奴隷制には疑問を持たずに暮らしていましたが、幻を見る力があることだけはひた隠しにしていました。
戦争が起きて、そういう際には閉じこめられる奴隷の扱いに、悩み始めます。
美しく気だてのいい姉は、一家の長男ヤヴンのギフトガールとなり、幸せそうだったのですが、事実上の妻ではあっても身分は奴隷。若者達に連れ出されて理不尽な急死を遂げます。
ガヴは衝撃を受けて、館を出奔、さすらうのでした。

やがて、森での自由民の暮らしに加わります。
そこは、逃亡奴隷の築いた一種の理想郷でした。学問のある若者として期待されますが、しだいにそこにもあった権力の暴虐さに気づかされます。
お洒落をして気楽に遊んでいるように見えた女達も、実はさらわれた身。権力を持つ中心人物バーナに逆らうことは出来なかったのです。
そのバーナと問題が起きて、逃げ出す羽目になり、出身地の水郷の里へ。

ガヴは、親族を見いだします。
そこは、男村と女村に別れて暮らすという~穏やかだが、それなりに掟のある独特な暮らしでした。
おばの幻視で追っ手がかかっていることを知り、また出て行くことに。
それぞれの世界の描写が要所々々を押さえて書き込まれ、みごとです。

森で再会した少女メルを連れての逃避行のはて、河を越えて、ついに奴隷のいない国ウルディーレへ。
一作目の切なさや、二作目のダイナミックさを兼ね備えて、人生と世界を感じさせます。
2007年の作品、2008年8月、翻訳発行。

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