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「クアトロ・ラガッツィ」

若桑みどり「クアトロ・ラガッツィ 天正少年使節と世界帝国」集英社

美術史家・若桑みどりさんの代表作といえるでしょう。力作です。
クアトロ・ラガッツィ(4人の少年)とは天正少年使節のこと。
世界を視野に入れていた信長の認可を得て、はるばるローマ教皇の元へと送り出されます。
日本人がキリスト教徒として優れた可能性があることを知らせようと考えたイエズス会のヴァリニャーノの発案でした。
4ヶ月後には信長が暗殺されたとも知らず、8年後に帰国した時には秀吉によって宣教師が追放された後だったのでした。
世界の動きと大名の動向がありありとわかり、宣教師にも出身や性格の違いがあったこと、宣教師達の見た信長・秀吉像もとても面白いです。

ヨーロッパで16世紀といえばカトリック教会の権威が揺らいだ時代で、そのために少年達は王侯のデモンストレーションに利用され、予想以上の歓迎を受けるんですね。
非常に真面目で優秀できちんとした彼らの印象は、長く日本人のイメージとして残ったようです。なんたって、日本人がヨーロッパに行ったの初めてだったんだから。
時代に翻弄された少年達のその後もさまざま。
東洋の一国・日本から船に乗ってイタリア・ルネサンスの研究に行っていた若い頃からの作者の思いも含めて、感動的です。

天正14年にいったんはイエズス会に保護状を出した秀吉でしたが、九州平定後に伴天連追放令を発し、清廉でお気に入りだった高山右近を改易してしまいます。急転するこのいきさつもダイナミック。
絶対君主になろうとする秀吉には、主君よりも神を大事にするキリスト教徒は、本来許せないわけです。でも平定前には利用していたのが、平定したとたんに猜疑心を強めたんだそうで。
ポルトガルの人身売買に秀吉が激怒したことや、スペインとポルトガルの征服者的性格に対する警戒もあったんですね。天正使節の親戚に当たる有力大名・大村純忠、大友宗麟が没した影響もあったのか。

天正18(1590)年、少年使節が帰国、いちおうは歓迎されるのですが…既に公の布教は禁じられていました。
イエズス会が駄目ならと甘い考えでフランシスコ会が来日して活動したことが裏目に出て、1597年には長崎で26人の殉教。
慶長13(1608)年には伊東マンショ、原マルティーノ、中浦ジュリアンはひそかに司祭となります。マルティーノは亡命先で尊敬する師ヴァリニャーノと共に働いたので、一番幸せだったかも?

1633年中浦ジュリアン殉教。隠れキリシタンの人々を支えた後のことです。何ともいたましいが60歳になっていたので、当時の本人にはやるべき事をし尽くした満足感があったかも知れません。
一人信仰を捨てた千々岩ミゲルは、どう生きたのでしょうか。最後に見た時にはキリスト教だけでなく仏教も何も信じない者の目になっていたそうで、ある意味では彼が一番現代人に近いというのも…何やら複雑な感慨を催しますね。

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コメント

懐かしいなぁ、「天正少年使節」っていうひびき。
確か小学校の5年か6年の夏休み課題図書だったんですよ、これ。いや、正確にはこれではないけど。
子供の頃に読んだので、余り記憶は定かではないんですが、ゴアに着くまでの船中の大変さが、印象に残っています。でも、子供心に一番ショックだったのは、帰国後の彼らの運命でしたねぇ。あんなに華々しく送り出されて、名誉と誇りを胸に帰国してみたら、世界が全く変わっていたなんて。浦島太郎もかくや、ですよね。

えーーっと、調べたら1971年の課題図書でした。5年生の時ですね、わたし。作者も全く忘れていましたが、松田翠鳳という人でした。たぶん子供向けに書かれたものでしょうね。今は残念ながら絶版のようですけど。

しあんさん、
課題図書?子供向けの本があったんですか~。
そりゃ、子供心に強烈だったでしょうねえ!
みんな殉教したような気がしていたので、そうじゃなかっただけ、マシですが。
行くだけで2年2ヶ月の旅、嵐にあったり風が凪いだり、病気が流行ったり…当時としては4人全員が生きて帰れただけでも奇跡的らしいです。

帰ってきたら禁じられていた、というのはよく覚えていますが、詳しいことは忘れていたし、宣教師の書き残した物や力関係など、知らないことも多くて、これは非常に面白かったですよ。

私が子供の頃読んで印象強かったのは、「源平盛衰記」「太閤記」「悲劇の王妃」かなあ。

大友宗麟に天正少年使節懐かしいです。
何せ豊後の国で生まれ育ったもので。
小中学校の社会の授業でも、結構力が入ってました。

若桑みどりの名前も懐かしいです。
学生時代は色々とお世話になりました。
だけに、昨秋の訃報は残念でした。

4人の少年の波乱万丈な人生を考えると複雑ですが、
伊東マンショがトスカーナ大公妃と踊っただの、
スペインにポルトガル、ヴェネツィアをはじめとする
イタリア諸都市を見聞しただのというエピソードの
一つ一つがうらやましくて仕方がない私です。
(フェリッペ2世や二人の教皇はどうでもいいらしい)

天正少年使節といえば、彼らが鼻を噛むのに
紙を使っていることに、彼の地の人々は
大そう驚いたというエピソードは本当なのかが
ずっと気になっていたりします。

タイトルの「quattro ragazzi」確かに直訳すると
4人の少年なのですが、現代イタリア語でragazziは
少年というよりむしろ青年というニアンスの方が
強く感じられます。
少年たちのその後まで書いているので、bambinoより
適切だとは思いますが、ちょっと不思議な感じです。

って、はっ。
水曜日のイタリア語の宿題をしてないことを思い出しました。
現在は市内に住むN先生(女性)に習っているのですが
彼女も毎週膨大な宿題を出してくれるのです。
以前習っていた(今も時々習っている)M先生も
真っ青な宿題の量です。
イタリア人が宿題を課すのが好きな民族だったなんて
思いもよりませんでした。
はぁ~、明日は宿題しなきゃ(←今やれよ)。

櫻子さん、
豊後の国のお人ですか!
そっかぁ~じゃあ、色々と親しみもあるでしょうねえ。
トスカーナ大公妃と踊ったって、おおっと思いますよね!

ラガッツィて聞き覚えのない単語でしたが、青年なんですか~響き良いですよね。8年もかかった旅行だし、大名の代理として、きちんとした人物という敬意もあるのかもね。
出立した時にはバンビーノだったんですね!

イタリア人が宿題好きとは…
はるばる日本まで来ている人は、ヴァリニャーノのように、教え甲斐のある日本人に出会って燃えるのかも?
櫻子さんは続けているだけ、エライですよ~。何だかんだ言いながら、ちゃんと上達しているもの。
私はイタリア語は旅行前ぐらいでしたが、たまに始める英語もフランス語も今は諦めて長いです~~

ragazzo(複数形ragazzi)は「少年」という意味も
勿論あります。
しかし、現在のイタリアだと少年というよりむしろ
青年というニアンスで使っている方が多いような
気がするのです。
テキストでも飲酒運転で捕まるragazzoや彼女と
ディスコに行くragazzoなんかがゴロゴロしています。

ちなみに、この時間になっても宿題には一切手をつけておらず。
一体、どうやり過ごす気なのか・・・。
困ったことに、今のクラスの人たちは、何故か私を
「優秀な生徒」と勘違いしているらしいので、
外面を保つためにも宿題は絶対にせねばなりません。
授業はろくな解説もなしに、ドンドン進むので、
予習も必須です。
スパルタM先生時代より勉強している気がします。

櫻子さん、
>テキストでも飲酒運転で捕まるragazzoや彼女と
ディスコに行くragazzoなんかがゴロゴロ
あはは~若者に近いニュアンスでしょうか。
日本語でも少年と青年は何歳からはっきり分かれるというのでもないしね…

若桑みどりさん、よく日曜美術館などでお見かけしていました。去年亡くなったのが惜しまれます、本当に。
読んでない著作をまだこれから読めるのだけが楽しみです。

優秀な生徒と思われてるんですか!継続は力なり、ですね。それはスパルタ先生のおかげかな?
がんばって~

優秀だと思われていたのには、裏があるのです。
以先月まで使っていたテキストは、M先生の教室で
使っていたのと同じテキストだったのです。
だから、答えを既に知っていたのです。
が、今月からテキストが変わってしまったので、
もう貯金はありません。
「美しい誤解は美しいままに」がモットーなので、
訂正しなかったツケが今頃きています。
そんな訳で、どうしたものかと途方に暮れながら、
大量の宿題をこなしてます。

櫻子さん、
なんとテキストのせいでしたか。転校生状態ですね。やっぱりスパルタ先生のおかげ?
ここで気合いを入れれば、美しい誤解が真実に…!?

>天正少年使節といえば、彼らが鼻を噛むのに紙を使っていることに、彼の地の人々は大そう驚いたというエピソードは本当なのかがずっと気になっていたりします。

レス書き忘れていて、亀ですが~そういう記述、ありましたね!
西洋人はハンカチで鼻をかむ習慣が長くて、ティッシュを使うようになったの、わりと最近でしょ。
日本人がちり紙、または懐紙を使う方が早いとは思います。
イタリアはわりあい文化的だったのではないかと思うけど…いつどんな風にという細かいことはわかりませんけど~

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