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「双生児」

12月に読んだ本です。1月も20日になってしまい、慌ててます~。

クリストファー・プリースト「双生児」早川書房

5部に分けた構成で、最初の語り手はノンフィクション作家のグラットン。
第二次世界大戦の頃に良心的兵役拒否者でありながら戦争の英雄だった人物がいたというチャーチル首相の記述に興味を抱きます。
これが双子だったからというだけならまあそれまでだが、幻想小説の大家プリーストがそれだけで終わらせるはずがない!?

頭文字も同じJ.L.ソウヤー。
ジャック(ジェイコブ・ルーカス)とジョー(ジョナサン・レナード)の双子は、ボートの選手としては息がピッタリで、ベルリン・オリンピックにも出場したほど。そこでナチスの幹部にも会うことになります。
滞在した家庭が実はユダヤ系で、そこの娘の亡命を手伝うあたりから、2人の道は分かれ始めます。

明るくやや単純なジャックは、空軍の爆撃機乗りに。
爆音の聞こえそうな描写で空爆がリアルに描かれ、そのあたりに興味のある人にも面白く読めそうです。
やや頑なな考え深いジョーはドイツから連れ戻った娘と結婚し、良心的兵役拒否者となって、村の人に白い目で見られながら、やがて赤十字の仕事を見つけて遠方へ勤めることになります。違う形とはいえ戦争に深く関わる皮肉な運命。
妻は孤独にさいなまれ、助けを求めたのは…?

ジャックの手記は、戦闘中に死にかけて記憶を一時失い、取り戻しかけた記憶を辿りながらつづられた物。
一方、ジョーもまた事故で死にかけた時に真実をかいま見…
幻想なのか、ねじれた関係の中にちらっと見えるのはあり得た未来なのか、双子の人生の不思議。

歴史改変SFに近い感触もありますが、改変してしまうんではなくて、メビウスの輪のように…
実在人物も登場、当時の政策に疑問を投げかける内容ともなっています。
ある時、歴史が大きく変わるかも知れない、そんな可能性に思い至る感動がありました。
緻密な描写で個性豊かな人間がばしっと容赦なく描かれ、不思議さと希望の残る結末に人生の哀歓が胸に迫ります。

「奇術師」で世界幻想文学大賞を受賞しています。

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