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「夜愁」

サラ・ウォーターズ「夜愁」東京創元社

第二次大戦前後のロンドンが舞台。
これまでとはかなり作風を変えて、文学の領域へ。
こんな風に書けるとは、驚きました。独特なムードがあり、登場人物の抱えた秘密と関わりを知っていくミステリ的な要素もあります。

空襲から生き残ったテラスハウスに住むケイは、今は孤独に過ごしている男装の麗人。
その建物に住む治療家を訪れる人の中に、美青年と老人という奇妙な取り合わせがありました。
青年ダンカンは窓を見上げて名も知らぬケイにほのかな好感を抱くが、彼には周囲の知らない過去があったのです。
一方、ダンカンの姉のヴィヴは不倫相手ととぎれがちな関係をいまだに続けていました。同僚のヘレンとは上手くいっているが、お互いに何か少し秘密があることを感じながら…
ヴィヴは父に絶縁されている弟の家を毎週訪ね、どうしてこんなことになったのかとふと思う…

1947年、44年、41年と3段階に遡っていく構成。
戦後間もない頃の平和だがまだどこか戸惑っているような時期、戦争末期の思い詰めた危機感と高揚、その前の時点でまだ皆がうら若いうちに物事が始まるきっかけ~という展開になるんですね。
数人の登場人物の運命が交錯する~意外な絡み具合が面白く、すっきり解決というのではないんですが、人生の中の一瞬のきらめきに美しさがあります。
ラストから逆に作品の冒頭へとふわぁっと意識が舞い戻り、恋する切なさと生きる哀しみがひたひたと胸に広がります。

歴史物が好評というのが嬉しかったデビュー作「半身」、少女2人が主人公のディケンズ風味のエンタテインメント大作「茨の城」を期待すると、ちょっと違うかな~。
これほど筆力があるとはゴージャスだなあ。どんどん難しい方面へ行かれたらちょっと寂しいけど…次はどんな手で行くのか??興味あり。

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コメント

>ラストから逆に作品の冒頭へとふわぁっと意識が舞い戻り、恋する切なさと生きる哀しみがひたひたと胸に広がります。

本当、おっしゃるとおりです。
この場合の恋は同性愛あり異性愛ありなのですが、もはや壊れかけた恋が、輝いていた昔にさかのぼっていく過程はせつなくて胸にくるものがありました。
ひとつひとつのエピソードがとても丁寧に書き込まれていて、あ、分かるなあその感じ~なんて。
「茨の城」の波瀾万丈の物語も書けて、こういう繊細な物語も書けるってすごいですね。

marieさん、
ありがとうございます。
そうですよね~…(^^)

なんかミステリじゃないそうだし、暗いのかな?と後回しにしていたんですが、marieさんのオススメで読みましたよ!良かったです~。
丁寧に磨き上げられた、魅力のある文章で、引き込まれました。恋が上手くいっているというのじゃなくても、切なさや美しさはあるものなんですね。
「茨の城」の怒濤の勢いを思い出すと、ホントに凄いなあと思います(^^)

とってもおもしろそうなので、記事とmarieさんのコメントを今は読まないでおきます!
そのうち、わたしも読んでみますね。

smashさん、
いらっしゃいませ~(^^)
お目にとまりましたか?
ネタばれにならないように良さを伝えるのって、大変(@@;
なかなか独特な作品ですよ~お好みに合うと良いけど!
また、おいで下さいね(^^)

はじめまして

最初は読みにくかったけど、余韻を残すいい作品でした

冒頭の1947年の章では、登場人物の状態だけが書かれます
ここが、ちょっと読みづらい
1944年、1941年と遡るにしたがって、登場人物の秘密が明らかになる

なんといっても、戦時のロンドンの描写がみごと
暗闇に立ちのぼる、砂埃の匂いまで感じる

そのなかで繰り広げられる、ケイとヘレン、ジュリアの倒錯した関係が圧巻
女性同士の愛の交歓って、なぜか美しく感じるのは私が男だからだろうか
登場人物のなかでは、ケイに強い興味をおぼえます
ラストのケイとヘレンの美しい出会い、いいですね

あれだけの活躍をすれば、燃え尽き症候群になるのもうなずける
これは推理小説ではなく、見事な群像劇です

第4作目に期待が湧きます

ino3さん、
はじめまして~コメント、ありがとうございます!

「夜愁」ユニークな作品でしたね!
最初は確かに登場人物がどう関係してくるのかわかりませんよね。あらすじをまとめるのにも、書きにくかったです

戦時中のエピソードは、灯火管制の緊張下で、ありありと思い浮かぶような描写が迫力でした。
魅力のある女性達はどんな容姿をしているのか、あれこれ想像していました。
さっそうとして性格も良さそうなケイの変貌がかわいそうなんですが…

>あれだけの活躍をすれば、燃え尽き症候群になるのもうなずける
確かに~それはありますね。

ラストの意外さと輝き、印象に強く残っています。
次回作も楽しみですね

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