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「わたしを離さないで」

カズオ・イシグロ「わたしを離さないで」早川書房

介護人として生きる女性の回想という形で丁寧に語られる、ある施設で育った少年少女の物語。
前々から評価の高かった作家ですが、これが最高峰でしょうか。
SF的な骨格を用いていますが、舞台は近未来ではなく現実の90年代以前を模していて、むしろノスタルジックな雰囲気。抑えのきいた丁寧な文章で若き日への郷愁を誘いながら、しだいに明らかになっていくその世界とは…!?

31歳のキャシーは介護人という特殊な仕事につき、かっての同級生も担当することになります。
平和な田園地帯ヘールシャムにあった寄宿制の学校で、世間から隔絶されたまま変わった方針でずっと育てられた仲間でした。
小さい頃にはいじめられ子だったトミーがだんだん魅力的な青年に成長していく様はリアルです。キャシーの親友だったルースがトミーとつきあい始めるのですが…
幼馴染みの男女3人のみずみずしい青春物としても読めます。
限定された世界での奇妙な感覚、教師達の言動から次第にわかってくる怖さ、若々しい願望や戸惑い、切ない思い… 重い手応えですが、命がいとおしく、きらめいて見えます。
これこそ文学というものでしょう。

現実の臓器移植の危険性といった問題に警鐘を鳴らす意味もないとは言えませんが、声高に告発するものではなく、どんな人間にも通じる普遍的なことを描いているように感じました。
誰しも案外狭い世界で身近な人の言うことを信じて限られた生き方をし、どこで道を間違えるか、どこで不当に扱われるか、わからないところがあるのではないでしょうか?

今年最初に読んだ本ですが、10日ぐらいかかりました。
何がそんなに忙しかったんだか…他も読まずにですから超遅いですが、じっくり味わうだけの価値はありました。

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コメント

カズオ・イシグロというと、映画になった「日の名残り」を思い浮かべます。「わたしを離さないで」はすごく評判がいいので、読んでみたいと思っています。日本人のような名前ですが、外国のかたなんですね。
わたしの初読みはもちろん「剣嵐の大地」!

marieさん、
カズオ・イシグロは日系だけど英国育ちなのかな?
英語で書かれた物の翻訳なんですよね~。
「日の名残り」も良かったです~しみじみとして。
こちらは若い女性の語りの柔らかさが不自然でなく、翻訳も良かったみたいですね。

「剣嵐の大地」は3番目に読み始めました!
ただ最初に手に入ったのが2巻だったため、1巻が手に入る前は他に入り、でも集中出来なくて2巻もちょっと読み始めちゃったり~と大混乱しました(@@;

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