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「闇を見つめて」

ジル・チャーチル「闇を見つめて」創元推理文庫

グレイス&フェイヴァー・シリーズも3作目。
主人公はロバートとリリーの兄妹。
1930年代、大恐慌で全財産を失い、上流階級から文無しに転落した二人に、大伯父から遺産が舞い込みます。
ところがそれは、田舎町ヴォールブルグの広大な邸宅に10年間住んで、自活する事という条件付きの相続。
グレイス&フェイヴァー・コテージというのが邸宅につけた名前で、王室終身貸与といった意味。
世間知らずだった二人が、しだいに能力を生かすことを覚え、地域にとけ込んでいく様子がユーモラスに描かれます。

今回の事件はまず、森の中にある昔の氷室を解体しようとした所、ミイラ化した死体をロバートが発見。身元を突き止めようとします。
リリーは初めて婦人会に参加しますが、婦人会のメンバーの一人ロクサンヌの夫が死体で発見されます。
ロクサンヌは野菜作りで一家を支えるしっかり者、失業した夫の方は女癖も悪かったので恨む人間はいくらでもいそうなのですが…

他に、着の身着のままで森に隠れ住んでいた若い女の子数人の売れない楽団も登場、不況のすごさを物語ります。
彼女たちのためにリリーは思い出のあるドレスを手放す決心をするのでした。
町や登場人物はどこかのんびりしていて、ミステリの黄金時代を思わせる懐かしさがありますが、描写はけっこう辛口なところも。作者が力一杯書いている感じです。

もう一つの事件とも言うべきは町の新聞記者ジャックの体験するボーナス行進。
日本では余り知られていないことだと思いますが、鎮圧に当たった指揮官の中にはマッカーサーもいたということです。
第一次世界大戦の後、従軍した人にはボーナスが保証されたのですが、それは老後に給付されることになっていた。不況のためにそれを先払いして欲しいという抗議運動が起こり、ワシントンへ向けて人々が行進して集結、一家をあげてキャンプする人々まで出たのです。
結果的には追い散らされるように解散するわけですが、ジャックはその一部始終を見て、一人前の記者として成長するという展開に。
余り知られていないこの時代の有様を描きたい、というのも作者の意図のようです。

原著は01年発行の作品。
06年3月にこの翻訳が出た時点で、あとがきによると主婦探偵ジェーンのシリーズは15冊、こちらのシリーズも6冊、あちらでは順調に出ているようです。
ジェーンのシリーズの翻訳は8冊までで止まっているんですが~ナントカ出して欲しいものです。

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