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「イルカの家」

ローズマリー・サトクリフ「イルカの家」

サトクリフにしては珍しく、少女が主人公。時代も16世紀っていうのはこれだけかな?
自伝的要素が含まれる初期の作品で、愛らしい佳作です。

両親のいない少女タムシンは育ててくれた祖母も亡くなったため、9歳まで慣れ親しんだふるさとデヴォンを離れ、一週間も馬に乗ってロンドンへ行くことになります。
引き取ってくれた伯父は鎧作りの親方。1階よりも張り出した2階を支えるのが青く塗られた木のイルカという綺麗な家に住んでいます。
明るい伯母も元気な従兄姉達も優しくしてくれますが、ふるさとから引き離されたタムシンはひそかな孤独感から逃れられません。
サトクリフ自身は孤児というわけではないのですが子供の頃から難病で孤独だったため、そういった所が反映しているようです。

ロンドンは今よりも小さく居心地の良い街だったそうで、国王ヘンリー8世が若かった頃、人々は明るい色を好み、祭りなどの催しを楽しんでいました。テムズ河を王とアン・ブリン一行が華やかな屋形船に乗って行くのを見るシーンも出てきます。
ファッションや料理などの文化が発展した、希望に満ちた時代だったんですね。
セイヨウイヌハッカとかキンセンカとかサンザシとか、全編にたくさんの植物が出てきて、香料にしたりお菓子に入れたりお祭りの飾りにしたりと何とも楽しそう。
ピクニックの時に魔法使い?のお婆さんの家に迷い込んでプレゼントを貰い、鉢植えがクリスマスに咲くと言われて楽しみに待つのです。
当時の風習もよく調べて、タムシンが目をみはるように見つめる日々の暮らしが慈しむように丁寧に描かれて、小さな喜びを大切にする作者の愛情も感じられ、心地よく頁を繰っていけます。

ふるさとの港で海を見て暮らし、船に乗って海へ出て行くことを夢見ていたタムシンは、女の子には無理とわかっていても夢を捨てきれずにいました。
思いがけずに理解者を得て、孤独から救われることになります。
当時の色鮮やかな地図を見ながら自分の船を走らせる冒険を想像して夢を膨らませる少女たちの姿が楽しい。
大航海時代だったんですねえ…
従兄の一番上のキットは家の跡を継ぐ前に一度だけと海へ出て、遭難してしまい、次男のピアズが徒弟となって修行しているのですが、実は…

「聖なる暗号」の中にある16世紀の少年の手記と近い時代です。あちらはもうエリザベス女王の時代だったので、こちらの方が早いですが。
16世紀を舞台に少女が主人公の作品というのも、そもそも、これしかないかも知れませんね?

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