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「まほろ駅前多田便利軒」

三浦しをん「まほろ駅前多田便利軒」文藝春秋

直木賞を受賞した作品。
すごく読みやすいです。上手くなったなあ…
何となくぬるそうなタイトルで~急いで読むほどでもないかと後回しにしていましたが、けっこう良いですね。
短編連作といった雰囲気で、ぬるくて暗めに始まり、今時らしい、それほど極端ではない人間模様が繰り広げられて行くけど、その現実味と奇妙さ、暖かさのバランスが良いんですよ。

東京郊外のまほろ市で育った多田はバツイチで独身、勤めを辞め、駅前で一人、便利屋を営む日々。
積極的な性格ではないが人は良く、依頼された雑務を淡々とこなすだけで受け身にだらだらと過ごしつつ、時には見過ごせないことも起きてくるわけです。
それほど変わった人間ではない多田が奥に抱えているもの…
ごく普通に生きてそこそこ上手くやり、ごく普通に幸せになっていくはずだった人間に何が起こったか、思いがけない出来事にどう対応していくか、崩壊した人生は再生するのか?これは普遍性のあるテーマだと思います。

高校の同級生だった行天春彦と偶然再会、行き場を失っていた彼がずるずる便利屋に居着いてしまいます。
預かったチワワが逃げたのを行天が見つけて抱いていたんですが、このチワワのエピソードは登場人物の個性がわかりやすく書けていて感情移入しやすい。預けておいて夜逃げした一家を捜す多田なりの論理、親でなく可愛がっていた女の子にどうしたいのか確認するんですね。
チワワっていうのも最近の話らしいし、いつも小さな身体を震わせているっていうあたりの描写が何とも言えない。そして次の飼い主を捜す展開で行天の性格とユニークな行動も鮮やかに。

一番極端な人間なのは行天(まあ名前からしてもね)
高校時代の行天は美形で成績も良かったが、一度しか口をきいたことがないという変わり者。そして、そのたった一度は、多田のせいだったということがトラウマのように横たわっていました。
大人になってみれば、口をきかない男の子というのも単なる性格ではない、余程のことがあると察しのつく部分がありますよね。「面倒くさかっただけ」と言われても、大人になった多田として思う所があって当然。

どういう点についても、それほど深く突っ込んではないんで、これが直木賞?とちらっと思わないでもなかったですけど~直木賞にはその方が良いのかも。色々な親子が出てきて、それが全体の風景を形作る、大勢の人に読んで貰うにはこういう方が良さそうです。

何しろ根底にあるテイストはBL…
恋愛物ではないし、私立探偵物のようにも読めて、おじ様方でもウッカリ身近に感じてしまうぐらいのこなれた仕上がりですけど。
なんか妙にお馴染みのモチーフや匂いがちらちらするんですわ。
イラストの多田はカッコ良すぎで、私は一見した所はもっと呑気な顔つきのイメージで読みました。ちょっとやさぐれているにしてもね。鋭い目つきじゃ怖くて雑用頼めないでしょう。
行天は顔は良いそうなんで、こんな感じかも~夢を見させて貰いましょう!?

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