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「ヴェネツィアの恋文」

アンドレア・ディ・ロビラント「ヴェネツィアの恋文」早川書房

副題は「十八世紀、許されざる恋人たちの物語」
著者の父がご先祖の館で発見した物を含め、あちこちに残されていた恋文から二人の人生を追ったノンフィクションです。
ヴェネツィアの名門メンモ家のアンドレアとイギリス人の血をひくジュスティニアーナ・ウィン。
無名の人なのかと思ったら、当時はそれなりに有名で、カサノヴァの知人でもあるためにそちらからの記録もたどれるようです。

アンドレアの家柄は千年続いたヴェネツィア共和国の12の名門のうちの一つ。跡取りとして期待される前途有望な青年で、一族の命運をになっていました。
当時は身分違いの結婚などすれば社交界から締め出され、職も失うという厳しさ。貴族も楽じゃないんですね~。
母親はきつい女性のようで、カサノヴァがヴェネツィアを追放されたのは、何とこの母親が息子達に悪影響を及ぼすと告訴したのが元だったのでした。

一方、ジュスティニアーナは美しいイギリス娘として人気がありました。
下級貴族の庶子という曖昧な立場にある彼女は、社交界に引っかかってはいるけれど、本当に上流の世界には入ることが出来ません。
両家に反対された二人は暗号を交えた熱烈な手紙を交わしながら忍び逢い、お似合いの二人に同情してか協力する人もけっこういたようです。

当時の風習として、結婚前の娘は出歩くのもままならないので、アンドレアはジュスティニアーナに老人との結婚を勧めるようになります。
身分ある人間の結婚は家同士の契約という面が強く、それだけに結婚後は社交的な付き合いはかなり認められるみたいで。この辺は日本とは感覚が違うような…?
未亡人になればなおのこと、自由の身というわけですね。
しかし、この企てもそう簡単にいくわけがありません。結婚を勧めておきながら嫉妬もする彼…
彼女はヴェネツィア、パリ、ロンドンと社交界を流れ歩き、スキャンダルの渦中に。ドラマチックな展開は小説のように面白いですが、手紙に生々しい感情の溢れるジュスティニアーナの苦難の道のりに息詰まる思い。
それでも、どこに行っても人に好かれる溌剌とした個性を持った女性だったのがわかり、後にはサロンを持ち、文才を生かす機会もあって、幸せな時もあったんだな…と、ちょっとしみじみ。

二人の没後、ナポレオンの侵攻でヴェネツィアはあっけなく終焉します。
「干潟の光のなかで」とほぼ同じ時代背景なので、合わせて読まれると面白いかと思います。
小説好きな方にも十分面白いので、カテゴリーに「海外小説」も加えました。

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