フォト

おすすめ本

« 映画「エマ」 | トップページ | 「天使の帰郷」 »

「ヒストリアン」

エリザベス・コストヴァ「ヒストリアン」日本放送出版協会

処女作にして全米ベストセラー第一位になったという、吸血鬼をめぐる歴史ミステリ小説。
作者自身のようにも思える女性歴史学者が献辞を述べ(この日付が2008年という未来になっている凝りよう)、過去を回想する形式で始まります。

1972年、アムステルダムで、16歳の少女は父の書斎で不思議な本を見つけ、謎に魅入られていきます。本の中にはドラクリアと記された龍の紋章以外何も書かれておらず、「不運なる後継者へ」という手記が…
そのことを知った父ポールは娘を旅行先に同行させ、苦しみながら渋々、かって父の恩師ロッシ教授が失踪した事件を追って行動したことを語り始めます。
幼い頃に死んだ母ヘレンとの出会いも実はその頃で、少壮の歴史研究者どうしだったのです。ハンガリーで成功したしっかり者のその伯母やイスタンブールで出会う教授夫妻、ブルガリアの老いた農婦など、脇役も魅力的に描かれています。

15世紀に実在したワラキア公ブラドは串刺し公と異名をとる残虐ぶりで知られ、当時激しく戦ったトルコ人はもちろん、国内でも犠牲者を出していました。
ドラクリアというのは父がドラゴン騎士団だったので、その息子という意味。
吸血鬼というのは後の作家ブラム・ストーカーの創作ですが、この本の中でも当時の古文書や民謡、伝説を拾い上げ、恐れられた実像はかなり近い物になっていきます。
ロッシ教授の若い頃にも、ドラキュラが生きていると思わせる事件が起きていて、それが現代まで…!?

ロッシの若い頃に起きた事件、父の若い頃のロッシの失踪、そして消えた父を追う娘とドラクリアの真実を追究する3世代の探索行がヨーロッパ各地やトルコで繰り広げられ、螺旋階段をまわりながら地下へ降りていくような感覚。同じ土地を訪れたり似たようなシーンを経ながら、クライマックスへと向かっていきます。

日本人が余り知らない土地や、世界遺産にもある有名な修道院など各地の訪問は観光案内のようなお楽しみ。
虚実取り混ぜた内容で、古文書や図書館の細かい描写に真実味があり、だんだんと事実のような気分になってきます。
美しい吸血鬼に魅せられる、というようなファンタジーな話ではないですが。
遙かな時代から続く歴史の重みを感じさせ、守り合う家族の愛情と、命がけで闘う歴史学者達の絆は感動的です。
書簡で語られる部分も多く、じりじりさせられる展開ですが~読み始めたらやめられない!ですね。

« 映画「エマ」 | トップページ | 「天使の帰郷」 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「ヒストリアン」:

« 映画「エマ」 | トップページ | 「天使の帰郷」 »

2019年10月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

カテゴリー

無料ブログはココログ

最近のトラックバック