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「カレーソーセージをめぐるレーナの物語」

ウーヴェ・ティム「カレーソーセージをめぐるレーナの物語」河出書房新社

カレーソーセージというのはドイツでよくある庶民的な屋台料理だそうです。
どこが本場かという論争や、どの店が美味しいかというサイトもあるんですって。
ケチャップにカレー粉を混ぜて炒めたソーセージ。
ブリュッカー夫人が作るシーンでは本当に美味しそう!

語り手が子供の頃、伯母と同じアパートに住んでいたレーナ・ブリュッカー。吹きさらしの屋台で手際よく作ってくれたカレーソーセージの味が忘れられず、そもそも自分が始めたんだと言っていた話の真相を確かめたくて、老人ホームまで訪ねて行き、話を聞きます。

第二次大戦末期、ハンブルク。
夫が出征したまま他の女性に走ったため、一人暮らしだったレーナは空襲の夜にふと出会った海軍兵曹ブレーマーが死地へ向かうと知ってアパートに案内し、そのまま匿って同棲生活を始めます。
物のない時代に、工夫を凝らして蟹スープなどのご馳走に似せた料理をふるまうレーナ。
脱走兵は捕まれば銃殺なので、隠れているしかなくなったものの、まもなく連合軍が上陸。しかし、レーナは彼を引き留めたくて、それを言えません。
年下の恋人とは上手くいきそうでしたが、実は彼も妻と幼い子供がいる事を隠していて、お互いに秘密を抱えた状態に…

複雑な状況がすんなりこちらの胸に飛び込んでくる書き方でテンポ良く読ませ、文句なしに充実した時間を過ごせました。
何よりも、たくましいおかみさんのレーナが魅力的。すごい美人ではないのでしょうが、親子ほど年の違う恋人を惹きつけるだけのものがあり、戦後の物々交換を上手くやってのけるあたりの展開もすごく面白いのです。
老いてもなお、素晴らしい編み物の腕があり、生命力豊かな感じですね~。

既に敗色の濃い時期にナチスへの密告をする近所の人もいる一方で、ドイツの勝利を報道するアナウンサーに吐き気を催させる料理を出すという反骨精神のあるコックのホルツィンガーなど傑作。
特殊な状況下での悲恋も納得のいく展開で、結末にほのぼのとした余韻を残す、味わい深い物語です。

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コメント

私も昨年出たばかりの頃に読みました。
初めて読む作家だったのですけど、とても楽しく読みました。
カレーソーセージ誕生の逸話は、いまか、ここか、と思わせながら、うまいこと引っ張っていって、もしかして結局明かされずに終わるんではないかと思った頃に、思わぬつながりで出てくるんですよね。
誕生のきっかけ自体はうっそ~~って感じだけど、それはご愛敬。
なにしろ、sanaさんのおっしゃるとおり、レーナの魅力で読ませるお話でした。
人物造形がすごくいいですよね。みんな生き生きしている。
あのおべっか使いの嫌われ者の人とか(名前忘れちゃった)、意外な密告者とか。
あと、結局リアルタイムでは一度も登場しないレーナのダンナなんて、ダメっぷりが目に見えるようでした。
この本、実はタイトルにひかれて、でも、中身がダメだったら、と思って、買うまでに結構時間がかかったんです。でも、読んでみるとなかなかの佳品で、うれしくなりました。

>しあんさん、
お読みになってたのですね~(^^)
そうなんです~まずレーナが良いですね。
亭主との別れ際とかもね、レーナあっぱれな感じ(^^)

>人物造形がすごくいいですよね。みんな生き生きしている。
ホントに!
活気のある描写で、悲喜劇的というか~人間くさくて、でも生臭すぎないみたいな。
おべっか使いのラマース、ジャガイモ通のハインツ、キタリスの毛皮を気に入る顧問官の妻とか。面白かったです~。

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