「香水」
パトリック・ジュースキント「香水」文春文庫
80年代ドイツ最大のベストセラーだそうです。
何年か前に書評でだいぶ話題になっていて、すっかり読んだ気になっていたんですが~実は読んでないことにはっと気づき、読んでみました。
18世紀のパリがいかに臭かったか…という描写で始まり、魚市場の喧噪の中で産み落とされた子供の数奇な人生が語られます。
主人公のグルヌイユは匂いを嗅ぎ分けることに天性の才能を持っていたのでした。
孤児として育ち、革なめし職人の小僧になって過酷な労働に耐えながら、周り中の匂いを嗅ぐことに至福を見い出します。
やがて香水作りの道へ…
なんとも人好きのしない人物で、関わる人間もつぎつぎに悪運のお裾分けを食らう有様なのですが~妙にテンポ良く軽快に読ませます。
副題は「ある人殺しの物語」
バルザックのように猥雑で饒舌、もっとブラックユーモアでシュール?
時代色豊かで、面白いです(^^)
場所と風俗と同時に感覚知覚の描き方に臨場感がありましたね~。
人物造詣がちょっと犯罪心理ものの描写風で現代的に過ぎるかなと感じないでもなかったのですが、主人公とそのやっていることはえげつなくて好感がもてないというより嫌悪の対象であるのにも関わらず、あの描写のおかげで魔法めいた超現実的な雰囲気があったり、こいつは何かを達成してくれるだろうという期待をもってしまったり。
物語の粗筋や人物同士の関係より、時代や風俗を上手に描いている本はなんだか安心して読めますね。
中欧もののエリザベス・コストヴァ の「ヒストリアン」も面白そうかなと思いつつ、2月、3月はオリンピックの録画と年度末がらみで忙しくて、「地上のヴィーナス」もレジナルド・ヒルの新刊も100ページ目辺りで止まっています。
投稿: K | 2006年3月 5日 (日) 14時13分
Kさん、
やっぱり読んでらっしゃいましたね!
最初は大丈夫かな?と思うぐらい口を極めて特異な状況が語られるのですが~
いやなかなか。
ありとあらゆる匂いをかぎ分け、頭の中で分類し、再構成したりしているとは…
山の中へ入って行くくだりなども意外な展開で。
前半ではあまりなかったので、人殺しの話というのはほとんど忘れて読んでおりました…
香水作りの才能がなくて店をたたもうとしていた老人や、見当違いな研究に大得意で利用しようとする科学者だとか、関わる人物像に時代が出ていて、面白かったです。
「ヒストリアン」?おお~それも面白そうですね!
そうだ、レジナルド・ヒルも出てますね! 次に出るまで間があるだろうから、ゆっくり楽しみに読みますわ~(^^)
投稿: sana | 2006年3月 5日 (日) 21時37分
救いの無いお話の癖にどこかユーモラスで面白みがあって、このお話、大好きです。
投稿: なぎ | 2006年3月 6日 (月) 00時23分
なぎさん、いらっしゃいませ~。
>救いの無いお話の癖にどこかユーモラスで面白みがあって
その通りですね!
何でこんなに面白いんでしょうか。
視点と語り口の根底にある何か、かなぁ(^^)
投稿: sana | 2006年3月 6日 (月) 15時12分