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「干潟の光のなかで」

ハンス-ヨゼフ・オルトハイル「干潟の光のなかで」鈴木久仁子・訳(クインテッセンス出版)

聞き慣れない名前と地味なタイトルで、読みにくい文学作品かなと思ったらそうでもなく、綺麗な文章で静かに流れていく贅沢な光景をさらさらと読ませてくれます。
革新的な絵画技法を巡る展開とややこしい恋の顛末が絡み合う、オペラを思わせる物語。

18世紀末のヴェネツィアで、干潟に流れ着いた青年を、バルバロ伯爵が見つけます。
息を吹き返したものの記憶をなくしていた青年アンドレアはどこか神秘的で、意外な絵の才能を持っていることがわかり、命の恩人と慕われた伯爵は雇うことにします。
美術愛好家の伯爵は隣家の跡取り娘カテリーナに思いがけない恋心を覚えるのですが、縁談は次男である弟の方へ来てしまいます。
当時、既婚女性は男性の従者を連れて外出するという風習があり、カテリーナがアンドレアを従者に選んだため、やがて若い二人の間には恋が芽生え…

何百年も続いた古い慣習や貴族のお屋敷を背景に望みのない恋が語られますが、どこかおかしみがあって、意外に前向きな、生きる喜びを描いた作品でした。
アンドレアの目に映る空や雲やたゆたう水の変幻自在な光景が目に見えるようで、うっとり。
さて、天才アンドレアの正体は?
芸術家三部作の一つだそうで~他の作品も翻訳して欲しいものです。

「思いつき・思い出し」のKさんのお薦めで読みました。Kさん、ありがとうです~。

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コメント

とても視覚的でまったりした作品で、ぜひ他も同じ訳者で翻訳して欲しいですね~

Kさん、
>視覚的でまったり
なるほど~言い得て妙ですね。

>きれいなものをきままに眺めるように読めました。
2月8日付け日記のこの一文が決め手になって、読んでみたんですよ。
>作品の雰囲気や格を壊さない訳文のセンスのよさが
確かに訳がピッタリなんですね、この雰囲気に~。芸術家物を出している出版社のようなので、ぜひ続刊希望します。

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