「警視の不信」
デボラ・クロンビー「警視の不信」講談社文庫(西田佳子・訳)
キンケイド&ジェマのシリーズも8作目。
誰なのかわからない人物の過去の回想も交えながら進む展開で、今までで一番緻密な構成。多彩な人物がくっきりと描き分けられています。
「警視の休暇」「警視の隣人」「警視の秘密」「警視の愛人」「警視の死角」「警視の接吻」「警視の予感」と続いてきました。
最初から読まなくても差し支えありませんが、ハンサムで優しいエリートで離婚に傷ついた警視という~そんなんいるか!?って夢のような?設定が楽しい(^^)
子供を抱えてダメ男と別れたジェマの人柄の良さと現実味が上手くかみ合っている展開で、5冊目辺りから俄然面白いです。
警視ダンカン・キンケイドと部下であるジェマ・ジェイムズは仕事でまずコンビを組み、やがて恋仲となって、今は警部補に昇進したばかりのジェマが妊娠しています。
まだ周囲に公表していない状態で、不安もありつつ、だんだんと深まっていく関係に心温まります。
近所でアンティーク・ディーラーの若い妻が殺され、ノティング・ヒル署勤務のジェマが初めて指揮をすることになります。
似た手口の事件との関連が疑われ、スコットランド・ヤード勤務のキンケイドも参加することに。
ポートベロという有名なマーケット街も近く、そこは移民の集まる地域でもあり、人間関係が複雑に交錯していたのでした。
悲劇的な部分もあるストーリーですが、余韻を残す結末が出色の仕上がりになっています。
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これ、良かったですよね~。
善と悪の書き方が単純じゃないのが好きでした。
最後に、悲しみの中から立ち上がる感じがあるので、読後感も爽やかで。
smashさんが一番の出来って仰ったのに、賛成でした~
投稿: なぎ | 2005年12月18日 (日) 23時24分
なぎさん、
善と悪…そうですね~。
誰しも色々な面があるというところが…
また同じような危機にさらされても、その後の道は違う…
人間像がしっかり描き分けられているのが良いですね。
smashさんのお薦めを読んで楽しみにしてたんですよ~。期待通りでした!(^^)
投稿: sana | 2005年12月19日 (月) 00時51分
デボラ・クロンビーは翻訳が出始めの頃、2,3冊読んだのですが、英国風物は楽しいものの恋愛要素が私好みというには強すぎて、途中で買うのを止めちゃっていたんですよね。具体的に何がどう気に入らなかったのかは忘れちゃいましたが。
今年、久々に「ま、たまにはいいか」と思ってこの本を買って読んだら、これは細やかで、英国ミステリらしく社会や物事や解決を多面的なままに描いて面白かったです。
sanaさんが5作目から面白いとおっしゃってると言うことは、面白くなる直前に切り捨てちゃってたのか、もったいない。
お詳しそうなsmashさんやなぎさんが一番とされている作品でもあるのですね。
というわけで、これ以前の直近のだったらやっぱり面白いのかもしれないので、遡って買ってみようかと思いました。何しろ最近、翻訳ミステリの刊行が減ってきているようで、書店で新刊のタイトルを見ても手が伸びる作品が見当たらないんですよね~(哀)
投稿: K | 2005年12月27日 (火) 01時14分
Kさん、
これ良かったでしょう~(^^)
デボラ・クロンビー、途中でやめてましたか~(^^; 悪くはないんだけれど、何だか読み終わった後すぐ内容忘れちゃう感じだったような!?
5作目あたりからってのも、恋愛要素というか警察側の人間関係の面白さが大きいかな…?確かに他に読む物がない時などには好適かも。最近、どのシリーズもあまり新刊出ませんよね(哀)
今回は格段に大人な仕上がりで、忘れられない作品になりそうです。
なぎさん、smashさんはミステリ読みの先達なのです。smashさんとこにトラックバックしようかなと思ったら、やり方がわからなくて時間切れ~(@@;
投稿: sana | 2005年12月27日 (火) 21時28分
sanaさん
え?先達だなんて、とんでもない~!!
sanaさんこそ、いつも丁寧に読んでらして、教えていただくばっかりです~。
このシリーズ、私としては、ダンカンの息子が出てきたあたりからぐっと面白さが増してきたように思います。なかでも「警視の不信」は、ほんとによくできてましたね。
kさんも気に入られたみたいで、よかったです~。
投稿: なぎ | 2005年12月28日 (水) 00時21分
>なぎさん、
いえいえ、先達ですよ~。書評もたくさん書いてらっしゃるし(^^)
私は2度目に読む楽しみをとっておこうとミステリは出来るだけ忘れることにしていたらどうも忘れ過ぎるので~あまり日がたたないうちに書いておこうかなというのもブログ始めた動機の一つ。
そうそう、息子のキットがね~良いんですよ。
だから恋愛というとより、なんでしょうね…当然のように一緒にいられる関係ではないから、家族愛に切なさが加わったような。
投稿: sana | 2005年12月28日 (水) 02時48分