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2005年10月

「王狼たちの戦旗」

ジョージ・R・R・マーティン「氷と炎の歌」シリーズの2作目、「王狼たちの戦旗」上下巻(早川書房)

中世イギリスを思わせる異世界を舞台に、王国の興亡を巡る華麗な物語。
謀反の罪を着せられて父を失い離散した北の盟主スターク家の子供たちが中心ですが、それだけでなく複数の登場人物の視点で交替に語られていくのが、積み重ねられてリアリティを生み出しています。

王位を争って派手に戦う兄弟、危機に直面する様々な女性たちに男装の騎士、渋い脇役、ひと癖もふた癖もある宦官に道化、妙に興味をひかれる海賊に小悪党、前の王家の生き残りで竜の母となる美少女など…
てんこもりというか大盤振る舞いというか。

亡き王の妻で、ラニスター家出身のサーセイ女王のきらびやかな悪女っぷりは、並み居る曲者達を押しのけて輝いています…
息子の最低ぶりもすごい(^^;

サーセイの実の弟ティリオンも印象的。
美貌を誇るラニスター家出身でありながら只一人醜く生まれて子鬼とあだ名されるティリオンは、実は知性的で元来はまとも?だったかもしれない人柄。
報われない扱いを受けながら、都を守るために奮闘するのです。

描写も詳しいので、臨場感がものすごい。この熱っぽさはゴロン夫妻の「アンジェリク」以来でしょうか。
時代の雰囲気はもう少し前で、ファンタジーというより戦国時代もの。危機に瀕するシーンがもっと多いので、もう魂を持ってかれそう…
苦闘する人物に感情移入してしまうのもしんどいんですけどね~それ以上に先が知りたい!

読んだのは今年の2月のことでした。
あちらでは賞を総なめにしているシリーズです。しかし、完結してません。
日本で続編はいつ出るのか…?

「七王国の玉座」

ジョージ・R・R・マーティン「氷と炎の歌1 七王国の玉座」早川書房

一度手にとったらやめられないので仕事は一段落した後でないと読み始めてはいけないという噂‥
ハードカバー上下巻(2段組~)確かに、やめられませんでした。

どことなく昔のイギリスに似ているファンタジー世界の波乱万丈の物語。
何年も続く長い夏と厳しい冬が交替でやってくるという設定の世界で、伝説と化している異形人の存在が怖れられ、夜警団が北の壁を守っている。
北の盟主スターク家の主エダードは王ロバートの摂政として南の都に招かれ、子供達の運命も大きく転回することに‥

狼の子を拾って一匹ずつ飼うことになる七人の子供達、中でも動物好きのおてんばな少女アリアには感情移入してしまいます。
対照的におすましな美人の姉サンサは華やかな都に憧れ、王子の許婚と見込まれて有頂天になるのですが…

主要な登場人物数人の視点で交代に語り継ぐように書かれていて、悪役も生き生きと眼前に見るように描き出されています。

誰かに感情移入しかけると、その人が不幸のどん底に突き落とされる可能性がかなり高く、そこで章が切り替わる(^^; 
いまだに頭の中がわんわんしているようです~。

今年の一押しはマーティンということで~アップしておきます。読んだのは04年の4月のことでした。

猫はいつも見ている

窓の外をじいっと見つめています。傍へ寄っても身じろぎもしません。
真剣な表情… 何がいても、捕まえられるわけでもないのにね?

VFSH0970 VFSH0964 カーテンをめくる手の動きに注目しているところです。何でも見逃しません。
動いているところなので、ちょっとぶれてしまいました。
楽しそうなのは、じゃれかかろうかと考えているせいかな…(^^)

持っている本

持っている冊数はちょっとわかりませんが、私の部屋には木製の背の高い本棚が4つあります。
中学の時の物から、数年ごとにだんだん増えてきました。押入の上段にはコミックスがぎっしり。
廊下にはスチール製の本棚、裏の納戸にはカラーボックスが数個あります。

10年ぐらい前まで、本はこの中に収まっていたから、まだ良かったんですが。
それから増えて、時々雑誌などを減らしてもまた溢れ出して…もう床にただ積んであるのもありますね。
猫の寝る場所や遊ぶスペースを確保しているので、足の踏み場はちゃんとあります(^^;

冊数なら小説の文庫が一番多いと思いますけど~これは図書館で借りやすいので、もう極力買わないことにしています。買うとどうも捨てられなくて…
一大決心をして10冊ほど古本屋に持って行ったらゼンゼン値段つきませんでした。

部屋に置いてるのは、画集、写真集、絵の描き方などの本、絵本、ポーズ資料、映画の本、服飾史関係の本など視覚的な物が多いです。
服飾史だけでも30冊以上あるでしょう。まあこれが専門?のようなもので…

どこかに本を持って避難するとしたら~京都服飾財団の展覧会のパンフと、玉三郎の写真集を持って逃げますね…
フランシスやクリスティなら、また手に入りますから(でもやっぱり数冊は持って行きたいかも…)

無人島に持って行くなら、もっと実用的な本が良いと思うけど(^^;
…あっ、フランシスの「標的」ならぴったりかも…主人公のジョン・ケンドルが書いたサヴァイヴァルの専門書があったら最適ですね!

好きな作家のこと

このブログで自己紹介といえば、まずこれじゃないかと思いつきまして…

一番長い間愛読し続けて、何度も読み返した作家というと、まずディック・フランシスです。中学以来ずっとですから~。
特に好きな作品は「度胸」「反射」「黄金」…などたくさん。

次がアガサ・クリスティ、エラリイ・クイーン。それからモンゴメリかな…これは十代の頃が主ですが、暗記するほど読みました。
ブロンテ姉妹も。クレイグ・ライスもかなりのお気に入り。

何年かの間、一番好きな作家がスタンダールだったり、デュマだったり、ドストエフスキーだったりしたこともありました。
チェーホフとか、シムノンとか、今思うと若かったのに渋い…

ここ数年ではミネット・ウォルターズ、ジャネット・イヴァノビッチ、ジェフリー・ディーヴァー、ロバート・ゴダードなど。
ちょっと前ならフェイ・ケラーマン、エリザベス・ジョージとか。

もっと前になると、ギャビン・ライアル、セシル・スコット・フォレスター。ロス・マクドナルド。ポール・ギャリコ。エド・マクベイン。

スー・グラフトン他女流探偵物一通り…
ルース・レンデル! シャーロット・マクラウド~。セイヤーズも。マキリップやブラッドリーなどファンタジー系も。
最近ハウルの原作者も私的には発見したところです。

大物忘れてるような…
トールキン。ル=グィン。アシモフ。サトクリフ。トマス・ハリス…

歴史ミステリや絵画をめぐるミステリは必ず手を伸ばします。女性の書いた海外ミステリもまず一冊は読んでみますね。

日本だと… 高村薫、宮部みゆき、京極夏彦、篠田節子、小野不由美。塩野七生。檀ふみ、群ようこ、斉藤美奈子。
漱石は高校の時だけがっつり読みました。三島は数年ごとにとびとびに読んでるような。司馬遼太郎、池波正太郎にはまった時期も。

今年の一押しはジョージ・R・R・マーティン。
去年はコニー・ウィリスかな…サラ・ウォーターズも良いですね。
その前はノア・ゴードンあたり? 書ききれませんが、それはおいおいに…

好きな漫画家は今市子、名香智子、山岸凉子、樹なつみ、萩尾望都、森川久美…ほかたくさん(^^)

一作目の浴衣

去年、最初に作った浴衣です。
これの前の試作品は、悪戦苦闘でものすごいことになりました(^^;
金魚柄を作りたかったけどなくて、ちょっと似た感じの布で作ってみました。

VFSH0752お人形はジェニーを作っている日本のタカラ社の物。
バービーは世界的に売れたのに日本では人気が出なかったために、日本人向きに開発されたんです。
確かに日本人好みというか~童顔でほっそりして、細すぎるくらいだけど~ずっと可愛ゆいですよね~。

正確には典型的なジェニーではなく、ジェニーフレンドのティモテというタイプ。ティモテは北欧系という設定になってたりします。
顔立ちが優しいのでお気に入り。

VFSH0739 写真はこの夏に撮影、お友達に貰った食玩の烏龍茶を置いてみました(^^)

帯を替えました

紫の帯で、秋らしい配色になったかな…?
帯は脇でスナップどめになっています。

VFSH0813 VFSH0826

お人形のサイトはいずれ別に作るつもりなんですけど~今作るペースも落ちているので、とりあえず自己紹介がてらに(^^)

お人形の服作りは趣味で始めて3年目、本を見ながらバービーやジェニーの物を作っています。
子供の頃、バービーを一つだけ持っていましたが、それ以来ン十年ずっとブランクだったんですよ~。
この1年は浴衣や着物を作るようになりました。

菊の振り袖

今シーズン活躍中?のうちのモデルさんです。VFSH0795

お人形は市販のバービー(アメリカのマテル社製)。
着物と帯、帯揚げは手作りです。

着物地は和風バンダナ(たしか250円…)の良さそうな柄のを使いました。作り方はジェニーの本を見て、一回り大きめにしています。

帯は金襴の売り場で~高いので20㎝だけカットして貰って作りました。
帯締めは組紐を30㎝にカットした物です。
ソファカバーはスーパーのワゴンで買ったおしぼりタオル(^^;

みゅん近影

画像を送れるかどうか…??VFSH0783 何とか入ったようです…ほっ。

出窓でひなたぼっこ。少し寒くなったので、足先を胸の下に入れてます。

最近はこのチェックのリボンにしました。
目が緑なので~こういう系統のが多いですね。

首輪タイプのは重いのが嫌なのか、ものすごい勢いで抵抗するんで、出来ないんですよ…
リボンは「よく似合うねえ、もっとハンサムになるよ~」と褒めそやして、なだめながら素早く結んで何とか(^^;

木綿と仲良し

「七緒」vol.4を読みました。

「着物からはじまる暮らし」という副題の付いたムック版の雑誌で、去年の秋に出た一冊目も持っています。「着物はじめ」という特集でした。

着物に興味を持ちだして1年と少し、去年の夏は親の古い着物をチェックし、それから自分用にポリエステルの洗える着物を一枚買い、この夏は浴衣を仕立てました。
とはいえ、試しに室内で着てみたことがあるだけで、いまだにちゃんと着てお出かけはしたことがありません…
あ、20代は別ですけど、それ以来~。

さて、今回の特集の1は「木綿と仲良し」
木綿の着物って着心地が良さそうじゃないですか?
外へ出かけにくいのも、汚れるのが心配だからなので、木綿なら自分で洗えるし、うちで練習に着るのにも良さそう…。
ただ素敵な物を仕立てるとなると、お値段はそれなりにかかってきますね…それが問題だ~。

特集の2番目はコーディネート特集で「今ならどう着る?お母さんの着物」
これも私には役立ちそうな気がして…
確かに、うちにもあるある!なタイプが載っていました~。良い組み合わせで、ぐっと粋になるんですよね~うっとり(^^)

コーディネートといいますか、着回しといいますか、これが昔から私は大好きで。洋服でも雑誌の一ヶ月着回し特集が面白くて良く買いましたね。
着せ替え人形が好きなのも、こういう好みから来てるのかしら。

ほかに「目からウロコの半襟つけ」というのも役に立ちそう。
ただ、初心者にとっては何通りのもやり方が並ぶと~それ読むだけで、くらくらしちゃうんですけどね(^^;

義経美形伝説の源流?

「現代語訳 義経記」中公文庫(高木卓・訳)

日本人が判官びいきしてきた義経像のもとはここにあるらしいので、読んでみました。

最初の方は平家物語ともだぶる内容ですが、義経はとにかく美形!と書かれています。
それに「おそろしい」とも何度も書かれているのは、庶民から見て強い武士というのが特異な存在だということでしょうか。
本当に怖いという書き方ではないれど、今の大河ドラマの義経よりはずっと誇り高く、猛々しく、ややエキセントリックともとれます。

弁慶との有名なエピソードなども確かにすべて原型は書かれています。
出会いは五条大橋ではなく、闘いが進むうちに清水寺で飛び回ることになっています。五条大橋は当時まだなかったそうですからね~。

けっこうびっくりな内容で、600ページもあるうちの三分の一までが腰越状の後、大河ドラマの今の辺り。
その辺までが短いのは一般に流布されている話を大体なぞったのかも知れません。
壇ノ浦などは簡単に他の人の口から語られて終わり、成功した武将として描きたいのではないらしい。

その後がむしろノリノリで、現代の小説のよう。
義経一行の流浪と逃亡、主な人物の最後の戦いがいきいきと繰り広げられるのです。
しんがりに残った忠信の戦いなんか長い長い~
陰鬱な感じではなく、俳優の見せ場のような感じでしょうか。
悲壮美のようなものを感じました。
政治には敗れたが忠臣に慕われた悲劇の貴公子に夢中になるという感じ…なのかな?

成立年代は鎌倉時代後期から室町時代初期のことで、西暦で言えば1330年前後ということになるらしい。
とっくに実朝も暗殺され、時代は移り変わっているのですね。
原型はもっと前に出来たかも知れませんが。
この熱っぽさはすごいなあ…こういう書き方なら、流浪する苦労もみじめでかわいそうというより悲劇的で面白いものになるんですね。

現代の小説というのとはちょっと違いますが、創作なので、カテゴリーに「小説」も追加しました。

竜は出てこないお伽話

アン・マキャフリー「天より授かりしもの」創元推理文庫(赤尾秀子)

パーンの竜騎士のシリーズで有名なマキャフリーの新作を見つけて、久々に読んでみました。
初版は2004年3月、原著は95年の作品です。

王女ミーアンは嫌な結婚を強制されそうになって宮廷を脱出、盗賊に殺されたと見せかけて、森の奥の廃屋に潜んで暮らし始める。
老いた馬に僅かな身の回り品とハーブなどの種を持ち出しただけで、火もつけれらずに苦労していると、背中に鞭跡のある少年ウィスプが現れ、逃亡者同士で助け合うようになります。

天賜(ギフト)というのがこの世界の設定では、生まれつきの才能という以上に魔法的な力となっています。
ミーアンは植物を育てる天賜を持って生まれ、それが王家にはふさわしくないと不当におとしめられてきたのでした。

不思議なことが時々起こるうちに仲良くなっていくが…
さて、ウィスプの天賜と正体は?

マキャフリーが孫娘のために書いた作品らしく、お伽話の普遍的要因も含み、少女の成長物語にファンタジーも加味した仕上がりとなっています。
気軽に楽しく読めますよ(^^)

「ボートの三人男」

ジェローム・K・ジェローム「ボートの三人男」中公文庫(丸谷才一・訳)

ご紹介した「犬は勘定に入れません」と「絞首台までご一緒に」の元ネタとなっているので、読んでみました。

英国式ユーモア炸裂というのか~
1889年に発表されて以来、長年愛されてきたのもよくわかります。

主人公Jの一人称で、イギリス紳士らしく品良くとぼけた語り口で、川下りの錯綜とした成り行きが面白おかしく綴られていきます。
時には美文調を交え、時にはチャップリンの映画のよう、時には面白いことに落語のようでもありました。

医学書を読んでは、どの病気にもかかっているという確信を持つ主人公は、肝臓病の特徴「総じて仕事がしたくなくなる」を読んで、子供の頃からの持病と深く納得する始末。
同じような悩みを抱える友達のジョージとハリスと共に、休養と気分転換のために旅行に出かけます。
もちろん犬のモンモランシーも一緒に。

何を持って行くかで意見が分かれてものすごい大荷物になって村人が見物に集まってきたり、景色に見とれて他の船に激突したり、降りて食事に行って夜中に戻ったら船をどこに着けたかわからなくなったりという珍道中ぶり。モンモランシーの湯沸かしとの戦いも忘れられない(^^)

子供の頃からの筏やボートの思い出も色々出てきて、楽しい失敗談が多いんですけど、イギリス人て本当に船が好きな人が多いんだな…と感嘆しました。

テムズ川流域の名所旧跡案内ともなっていて、綺麗な風景を描写した所や危険な区域の説明もあり、変化に富んでいます。
丸谷才一の訳で、井上ひさしの後書きですから~読んで損はないですよ。

ちょっと調べたら、テムズ川は驚くほど変わっていないということでした。

「犬は勘定に入れません」

コニー・ウィリス「犬は勘定に入れません」早川書房(大森望・訳)

大好きな作品なので、前に読んだ時に書いたことをアップしておきます。
内容はタイムトラベル物なので、ジャンル的にはSFでしょうか。
「消えたヴィクトリア朝花瓶の謎」という副題が示すように~歴史ミステリに近い感触がありますが…

「犬は勘定に入れません」というタイトルは「ボートの三人男」の副題だったもの。
犬も一緒にボートに乗ってテムズ川下りをするわけですが、三人というのに犬は入ってない、という意味合いでしょうね。

近未来のオックスフォードから時間旅行へ旅立つ若き研究者ネッドとヴェリティが主人公。
つまり、中世へのタイムトラベルを描いて荘厳なまでの迫力のあった「ドゥームズデイ・ブック」と舞台設定は同じです。
今回は主な行き先が19世紀の平和な時代で、恋愛の要素も強く、楽しめる仕上がりになっています。

この話の中では時間旅行は十分可能になっているけど、費用がかかるのでスポンサー無しでは成り立たないものとなっているんですね。
ネッドとヴェリティは、スポンサーの好き勝手な要請にしたがって何度も行き来を繰り返します。
時差ボケならぬ時間旅行ボケという症状に悩まされながら、歴史に誤った影響を与えないように奮闘することになります。

歴史の過誤を理論的に研究しているのは日本人の藤崎といい、最近読んだ小説のあちこちで見かける日本人像の中でもマトモな名前と役割を与えられている方だと思う‥(^^;

未来では絶滅種となってしまった猫を巡っての物語でもあります。
プリンセス・アージュマンドというたいそうな名前の猫にネッドは振り回されます。
この猫が後書きで「性格の悪い猫」と表現されているけど、猫としてはごく自然にふるまっているだけで性格は全然悪くないのも可笑しい(^^;
旅の道連れのブルドッグも良い味出してます(^^)

遡って~「真珠の耳飾りの少女」

10月14日からこのブログを始めました。
それ以前の記事は日記にメモした物から抜粋しました。そのため、実際に読んだ日付とは異なります。

「貴婦人と一角獣」と同じ作者の「真珠の耳飾りの少女」が映画化された時の日記をここに掲載しておきます。
フェルメールは大好きな画家ですので。
2004年の5月のことでした。

映画はフェルメールの有名な絵(青いターバンの少女とも言う)をモチーフにモデルとなった召使いの少女とフェルメールの心の交流を描いています。
実際にはモデルは不明なのですが、若々しい表情を捉えた印象的な小品は決して派手でもないし、ヌードとかそういうのでもないんですが~
確かに奥さんが見たら憤慨しそうなモデルへの優しい眼差しを感じさせます(^^;

原作も読んで気に入っていました。
映画もかなり忠実にフェルメールの絵を再現してあります。
画家の家庭の内情、運河沿いの暮しぶりや独特な被りものなどが面白く、デルフトの眺望が絵そのままなのも嬉しい。
映画としても良い出来です。ただ欲を言えば‥

原作ではもっと幼い頃に奉公に上がった少女の戸惑いやけなげさが印象に強いのですが、映画では17歳から登場して若さではちきれんばかり。
わりあい短期間に主人に才能を見い出されるようになるため、同居している妻、義母、娘たち、料理女の嫉妬の視線を浴びるのは仕方ない感じ(^^;

フェルメールは私も大好きな画家ですが、外見などしかとわかっていないんです。
コリン・ファースはいつもとイメージを変えて力強く演じていました。
この絵が日本に来た時にも見に行きましたが、なんとも不思議な柔らかな吸引力をもつ作品ですね。

ボートでご一緒に

ピーター・ラヴゼイ「絞首台までご一緒に」ハヤカワ文庫

クリッブ部長刑事&サッカレイ巡査を探偵役とするシリーズのうちの一冊。
ヴィクトリア朝を舞台にした歴史ミステリです。

タイトルではブラックユーモア漂う短編集かと思いましたが、実はジェロームのユーモア小説「ボートの三人男」を題材にした作品。
その点ではコニー・ウィリスのあの名作「犬は勘定に入れません」と同じ。

ですが~こちらは「ボートの三人男」が1889年に発表されて大人気を博した頃の話で、小説通りにボートでテムズ川を下るのが流行っていたというのが面白い。

ヒロインはうら若き学生のハリエットで、その視点から入っていくために他の作品より若々しい雰囲気で、やや軽めの楽しい話になっています。
大人しい優等生だった彼女が級友にそそのかされて、テムズ川で夜中に裸で泳ぐという企画に乗ったのが運の尽き?
死体を発見してしまい、目撃者としてボートに乗って容疑者を追い続ける警察と行動を共にすることに…

堅苦しい時代だったにもかかわらず、というか、だから余計やりたくなるものなのか?名門の淑女が川で泳ぐというのは大変なこと。
もちろん退学ものなんですが~。
「ダロウェイ夫人」の中にも若い頃の回想で、裸で走り抜けるいたずらがあったのを思い出します。

クリッブ部長刑事のことが名前は覚えがあるけどキャラクターがはっきりしないので(…き、記憶力が…)
リストを調べたら、「マダム・タッソーがお待ちかね」が最終作に当たるとか…えええ、だいぶ前ですよね。あの~サントリーミステリー大賞か何かの受賞作じゃなかったでしたっけ…

調べたら83年でした。これだけハードカバーを図書館で借りて一度しか読んでいなかったために、頭の中で別枠になってたようです。

ラヴゼイは「贋のデュー警部」「キーストン警官」からの文庫の方が私の中ではイメージが繋がってます。
短編集が面白いし、軽妙なバーティ殿下のシリーズがお気に入りだし、ダイヤモンド警視のシリーズも「最期の声」まで読んでいるんですよ。

好きな作家のうちに入ると思うのに~(き、記憶力に問題が…)
読んでないらしい物をリクエストして読んでみます~。

うちの猫のご紹介

写真の猫はうちのみゅんです。4歳の男の子。

2001年7月に、2ヶ月足らずのホントに小さい頃、うちにやってきました。
捨てられていたのをご近所の方が拾ったのですが、5月に生まれたと推測されます。

背中はグレーっぽい地にシマシマのつやつやした雉猫です。
顔にちょびヒゲのような柄があるのが一番の特徴かな? おなかは薄茶に縞のチョッキを着たような柄で、足先は不揃いに白くなってます。

一緒に生まれたらしく一緒に捨てられていた3匹の中で、この子だけがこういうシマでした。
兄妹は2匹とも白に茶色っぽいブチで、うちにあったヌイグルミの中にちょうどそういう色合いのがあり、一緒に眠って一緒に育ちました。
今でも毎日くわえて運んで、一緒に寝ています。

性格はやんちゃで元気いっぱい、野良猫が多い時代だったらケンカに明け暮れていたかも知れません。
室内飼いで他の猫と接触がないし、外で遊べない分も手をかけて可愛がってきたので、かな~り甘えん坊です。

わりと規則正しい子で~毎日「そろそろお茶の時間じゃないの?」とか「まだお風呂入らないの~?」とか、みゃあみゃあ鳴いて呼びに来るので、せかされながら生活しております。
時間が狂うと自分がご飯を貰うのが遅れたり、遊ぶ時間がなくなったりするからでしょう(^^)

すぐ動いてしまうので、写真を撮るのはなかなか難しいんです~。
顔が大きく写ってますが、実際には身体の割には顔は小さめで、身体が長くてデカイです。
最初見た時には700グラムしかなかったのに~5.5キロあります(^^;

「魔性の馬」

ジョセフィン・テイ「魔性の馬」小学館
リチャード3世の実像に迫る「時の娘」で知られる作者の、それに先立つ作品です。

歴史ある牧場の跡取りだった少年パトリックが海で自殺したと思われて10年がたち、双子の弟サイモンが家督相続をしようという時に、死んだはずのパトリックが登場し、周囲を驚愕させます。
実は、孤児で各地を放浪していたブラットが、たまたま瓜二つだったために替え玉に仕立てられたのでした。
最初は断ったブラットも自分に似ているという一族を見てみたい気持ちがあり…

いつどんな風にばれるかというサスペンスと、10年前に本当は何が起きたのかという謎で興味を引っ張ります。
重苦しい話なのかと思ったらさにあらず、とまどう家族も個性的な馬たちもくっきりユーモラスに描き分けられ、地方の馬術競技など面白いシーンがあって飽きさせない。
古い作品なのでややあっさりしていますが、読後感の良さは貴重で、どこかディック・フランシスを思わせます(^^)

トヨエツの太宰

豊川悦司主演の2時間ドラマ「太宰治物語」を見ました。
妻の美知子役が寺島しのぶ、「斜陽」のモデルとなった愛人の静子が菅野美穂という豪華な配役だったので楽しみにしていました。

井伏鱒二の紹介で見合いするところから始まります。
若い頃に心中しようとして相手だけを死なせてしまった過去に苦しみつつも、生活者として出直そうとしていた時期でした。
しだいに作家として成功していくのですが…浪費が激しく、家庭には寄りつかなくなってしまいます。

サービス精神が旺盛で、人に喜んで貰えることが何よりも好きという一面を強調し、純粋なところのある天才として描いています。
たしかに人の心に寄り添っていくようなところがあり、口も上手かったんでしょうねえ…

痩身に着流しの似合う豊川がいかにも小説家という風貌に見え、にぎやかにしている時の躁状態の目つきが、ただ者ではない感じでした。
現実の太宰はもっと重苦しかったのではないかと思うのですが、この外見と雰囲気だったら騙されるかも?

しのぶさんは地味目の着物を綺麗に着こなして、さすが立ち居振る舞いが自然でしたね。
妻はえらい苦労をさせられたわけですが、存在感があるので深い縁のあるパートナーに見え、ただの被害者ではなく良き理解者であった部分もあったのでは…と感じました。

没落した家のお嬢様である静子は、小紋のはんなりした着物姿で、最初ははかなげな風情で現れ、女として変化する様を菅野美穂がきっちり演じていました。
花が開いた途端に、苦い思いをするわけですが…

それぞれの娘達が作家になっていることに思いを馳せてしまいました。不思議なものですね…

今読む平家物語

宮尾登美子「宮尾本平家物語」1~3(4巻はまだ残してあります)

1を読んだのはだいぶ前ですが~                                 清盛の生い立ちから始まり、さすが熱のこもった文章に引き込まれました。
しっかり者の時子さんはほぼ大河ドラマのまんま、清盛と出会う若い頃のことなども面白いです。                                                  徳子はあまり取り柄のないおっとりした娘で、子が出来るまで何年も放っておかれて周りをハラハラさせたとか…

源平合戦の前から、天皇位を巡っての争いが続いていた時代だということがよくわかります。                                                   官位を待望する都人のせめぎ合いが生々しく描かれ、父の義朝が強い不満を抱いていたことを知っていた頼朝にとっては大きな課題だったことが察せられます。
義経は赤ちゃんだったし、その後もお寺や平泉にいたからねえ… 知らなかったんだよね(^^;

初マクラウド

アリステア・マクラウド「灰色の輝ける贈り物」
初めて読んだカナダの作家の短編集です。
知る人ぞ知る珠玉の作品集だそうなので読んでみました。

マクラウドはプリンスエドワード島の隣の島で育ち、木こり・炭坑夫・漁師などで学資を稼いで大学へ行き、英文学の教鞭を執りつつ、31年間に16作発表したという寡作な作家。
つまり、これで半分ぐらい読んでしまったことになるらしい。

穿つようにゆっくり選ばれた言葉で何気ない日常の一こまが目の前に浮かぶように描かれています。
生き方の違う親子の別れやふとした心の触れあいなど、状況の切ない意味が次第に明らかになっていく…

静かな重みがあり、いくつかは忘れられない作品になりそうです。

実際に読んだのはこの日ではなく、10日ほど前になります。ブログを14日に始めましたので、この秋に読んだ本の感想を数冊、とりあえず詰め込んでおきます~。

「タフの方舟」

ジョージ・R・R・マーティン「タフの方舟」1、2
波瀾万丈の異世界ファンタジー「氷と炎の歌」シリーズで大ヒットをとばしているマーティンのSF短編集。
もともと、こっちの畑の人らしいですね?

宇宙一あこぎな商人ハヴィランド・タフは、禿頭で真っ白な皮膚という異相の巨漢。
千年前の胚種船を狙うチームに雇われたのがきっかけで、生物兵器満載の巨大な宇宙船で起きた壮絶な死闘を乗り越え、たった一人生き残っていた。
いまや多種多様なクローンを自在に作れるため、問題の多い星に注文通りの生物を提供できるのだが…

SFらしい奇想天外な設定、虫の良い事を願う住人とのやり取り、特に女傑トリー・ミューンとの駆け引きが面白い。分かり易さはさすがエンターテイナーです。
作者は猫好きらしく、愛猫が活躍するのも微笑ましい(^^)

忘れられた英雄の物語

ローズマリ・サトクリフ「英雄アルキビアデスの物語」原書房
1969年の埋もれた名作の初訳。先輩のお薦めで読んでみました。

アルキビアデスと言えば~確かソクラテスを敬愛するあまり誘惑したが断られたというエピソードしか覚えていなかったんですが。
その出来事も笑い話としてちょっと出ています。

紀元前5世紀のギリシアは都市国家ポリスの時代、アテナイに生まれたアルキビアデスは金髪碧眼の際だった美貌、名門の生まれ、体力知力すべてを兼ね備え、弁舌たくみで、傲慢だが人をひきつけるカリスマ的な魅力を持っていました。

しかし妬む者も多く、政敵に陥れられて宿敵スパルタに亡命する道を選び、アテナイに勝つ策を授けることに。
その間なんとスパルタ王妃と恋仲になって子までなしたというんです。スパルタ王は妃と不仲だったとはいえ、アテナイへ出征した留守中のことなんですよ。
相次ぐ敗戦に疲弊したアテナイでは、風向き変わってアルキビアデス待望論が生まれ、やがて歓呼と共に迎え入れられるが…

実在人物にしては面白すぎる波瀾万丈の人生を、周りを囲む兵士など色々な立場の人間の視点から描いていきます。
今では珍しくない手法だけど、当時は日本人にはわかりにくいと思われたのでしょうか…?

唯一信頼できる酔いどれの航海長との付き合い、遊び女ながら少年のように馬を駆るティマンドラの一途な愛、参戦することもなかった穏やかな一市民の見たアテナイの衰退など、最後は万感胸に迫ります。

子供向けのシェイクスピア

ゲアリー・ブラックウッド「シェイクスピアを盗め!」白水社

時はエリザベス一世の時代のイギリス。
孤児院から引き取られ、速記を発明した博士に仕込まれた少年ウィッジが、シェイクスピアの戯曲を盗み取ろうとする悪巧みに巻き込まれます。
著作権が確立していない当時、出版される前の戯曲を他の劇場でも舞台にかけることが出来れば、大きな儲けに繋がるのでした。

ウィッジを金で買った雇い主に脅されて、仕方なく劇場の周りをうろちょろするうちに、意外な成り行きで役者仲間に加わったウィッジが、しだいに自分の居場所を得ていく…
劇場の裏側が子供の視点で面白く描かれています。
「恋に落ちたシェイクスピア」の子供版みたいな~

青少年向けでやや軽めですが、続編もあるそうなので楽しみ。

意外なところに義経が

萩尾望都「あぶない丘の家」小学館文庫
教養あふれる巨匠のSF、といっても軽快なテンポの4話連作の少女漫画です(^^)

丘の上の家に暮らす主人公マヒコはふつうの高校生の男の子だが、家で次々に不思議な現象が起こるうちに、兄が異星人だと知ることに…。

第3話「あぶない壇ノ浦」が、義経や頼朝に興味を持って本を読み進むうちにタイムトラベルしてしまう話。
大河ドラマをやっている今年読むにはタイムリーでしょう。

重要なシーンを何度も目撃するという、辛くもあるけれど、ある意味夢のような展開になっています。
歴史上の人物の顔が今の大河ドラマの配役とだぶって面白い。
きらきらした美少年で思いこみの激しい義経、ぷっくらした唇の可愛らしい静、元気で勝ち気な濃い眉の政子、有能な政治家のおじさんだが実は少年期からずっと寂しいものを秘めていた頼朝…

さすがトラウマを抱えた人間のとらえ方、描き方は巧みなものがありました。

大人向けのトーベ・ヤンソン

トーベ・ヤンソン「誠実な詐欺師」筑摩書房

寒村で暮らす身寄りのない姉弟が、主人公。
弟は少し頭が足りないと思われていて、村の雑用を引き受けていました。
姉のカトリは誰ともうち解けない変わり者。数字に強く有能な店員だったのですが、ある事情で仕事を辞めることになります。

かたや村はずれの広大なお屋敷に初老の女流画家が一人で住んでいて、この3人の不思議な関わり合いの物語になります。
カトリは、弟のたった一つの夢を叶えようと密かに決意して、しだいに屋敷に入り込んでいくのです。
親から財を継ぎ、才能にも恵まれておっとりとして生きてこられた画家と特異な性格のカトリとの葛藤。童心を共有する弟と画家の交流が、やがて意外な展開を迎え…

「ムーミン」の作者が大人向けに書いた小説で、独特な魅力があり、良い物を読んだ満足感が広がりました(^^)

注:10月14日から、このブログを始めました。遡って日記のメモから幾つか本の感想をアップしていますが、実際に読んだ日付けとは異なります。

魅惑のタピスリーを巡って

トレイシー・シュヴァリエ「貴婦人と一角獣」白水社

映画化もされた「真珠の耳飾りの少女」で有名な作者の第4作だそうで、とても面白かったので、残り2作も翻訳して欲しい~!

純な少女の目に映ったフェルメールの魅力に比べると、タピスリーを注文する新興貴族の無神経さや、元になる絵を斬新なものにした絵師の憎めない色男ぶりなど、もっと辛口で軽妙ですね。

視点を変えていく方法で、様々な生き方が巧みに描き分けられています。
修道院に入りたいと願う貴族の夫人やその奔放な娘、苦労してタピスリーを織る工房の親方、腕もあるのに組合に女性の参加は禁じられているおかみさんなど…
特に、工房の長女で、目が悪いけれど感性豊かな娘の運命がどうなるかははらはらさせられました。
描写は生き生きとしていて、決してわかりにくくはなく、ちょうどタピスリーのように緻密で重層的な面白さがありましたよ。

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